「越前、」 行くな。 そう言って抱きしめてしまいたい。 でももしそれを言ってしまったら、俺はきっと越前を離さないから。 越前のすべてを束縛して、鳥籠に閉じ込めてしまう。 だから。 「アメリカ、行ってこいよ」 お得意の笑顔になって越前を送り出す。 これでいいんだ。 すべては越前のため。 越前のことを一番よくわかっている俺だから、おまえの先輩でもある俺だから、 だから俺は・・・ 「桃先輩、俺勝って来るッス」 いつも通りの勝ち顔。 ポーカーフェイスは俺の特技でもあるから、越前に負けないように俺も笑う。 「おう、それでこそ越前!」 アメリカ行ってしっかり暴れて来い。 それで必ず勝って来るって信じてる。 その間、俺たちは全国へ行って、おまえと同じとき、同じ瞬間に歓声を浴びてやるからな。 俺は全国で、おまえはアメリカで。 離れててもずっと一緒だ。 「負けんなよ」 「当然」 おまえがどこまで行けるのか、どこまで上へのぼっていくのか。 俺はずっとおまえを見てるから。独りじゃない。 抱きしめるよりも、キスを交わすよりも、俺とおまえはもっと深く繋がってるから、 その場の慰めなんて求めない。 その代わり、暴れて暴れて勝ちまくったら、とびっきりの笑顔で帰って来い。 全身全霊込めて抱きとめてやる。 いつかそのときが来るまで、俺はずっとおまえを待ち続ける。 R-side |