「わり・・・エチゼン、もう大丈夫だから」

「・・・まだ痛い?頭」

「いや。もう、痛くない」



桃先輩が写真から目を逸らしたと同時に 一瞬にしてそれは治った。

さっきまで すごく痛そうに頭を抱えていたのに

今はけろっとして なんだったんだ、と不思議そうに首をかしげる。







これは・・・・・・記憶の、抑制?

桃先輩の体が 拒否してるの・・・?

体がまだ 治ってないから

・・・俺が無理矢理記憶を引き出そうとしたから



「もう、無理しないで・・・」

「平気だって!俺はまだ」

「いいからっ!!」

「・・・・・・わかったよ」



また写真を見ようとする桃先輩から それを夢中で取り上げる。

気持ちを抑えるように しぶしぶと桃先輩が言った後

山になっていた写真と一緒に カバンの中へ戻した。

無理して思い出させるよりも 少しでも足が早く治ってほしい。

そうして余裕ができたら 俺のことを・・・きっと・・・・・・



そう思いながら目線をずらす ギプスをした桃先輩の足。

軽症と称されたこの足







「大分よくなったの?・・・足」

「あぁ!も〜ちっとで退院できるんだぜ!」

「・・・へぇ」



足が治って 退院できるのは当たり前

それを嬉しく思うのも 当たり前

普段どおりの生活に戻って 学校sって 授業受けて

放課後にはまた テニスをして

でも・・・・・・



「ほら俺って運動神経いいから 事故っても大したことねぇんだよ!」













・・・・・・・・・・・・。













・・・・・・・・・・・・・・・・大したこと・・・ない?



















今桃先輩は笑って 俺に そう言ったの?



大したことないって 俺に言ったの?

















タイシタコトナイ・・・

俺の頭の中でリピートする。





大したことない







大したことない・・・





どこが・・・











「どこが大したことないんだよっ!!!!!!!!!!」

「・・・エ・・・エチゼン・・・?」

「桃先輩のことずっと心配してて、それなのに!!なんで!!!!

なんで俺のことだけわからないのっ!!!」

「・・・・・・」

「先輩たちのことは覚えてるのに!!なんで、俺のことだけわからないの!!!

俺のこと思い出せないのに どこが大したことないの!!!!」

「おいっ エチゼン!」

「・・・桃先輩なんか・・・・・・・・・・・・大っ嫌い!!!!!!!!!」

「・・・っ!待てって!!どこ行くんだよ!!」



爆発してしまえば 止まらなかった。

隠していた表情も 我慢していた想いも すべてが爆発して・・・





なんで俺のことだけ・・・

なんで・・・なんで・・・っ!!!





すべての想いが 爆発して

なにをしたらいいのか どこにいればいいのか 自分はなにをしてるのか







わからない。



もうなにも・・・わからないよ・・・・・・









ガンガン音を立てて 階段を登る。

屋上に続く階段をただ走りぬけ 重い錆びれた扉を勢いよく開ける。

気味悪いほど青い空の下をくぐりぬけ フェンスにがしゃんと音を立てて手をかける。



その気味悪いほどの空に浮かぶ ゆっくり動く白い雲を見ながら・・・





















俺は初めて 声を上げて泣いた・・・

































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