・・・何日か経って

少しずつ現実を受け入れられるようになったころ

ちょっとずつだけど お見舞いに行けるようになった。

でもその度に 医者は言う。



 『足のねんざが治ればすぐ退院できるでしょう。軽症でよかったですね』



軽症・・・

ケイショウってなに















数日後。

俺と先輩たちの訴えがあって 桃先輩はいくつか検査を受けた。





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   軽   症:ねんざ

   健康状態:良好

   精神状態:安定







結果はすべて『異常なし』



そんなわけない

俺のことわからない桃先輩なんて そんなの・・・

・・・異常ないわけない・・・









先輩たちの言葉が蘇る。









  『よかったな、越前。桃は軽症ですんだみたいだぞ』



  『大丈夫だよ』



  『よかったね』





ドコガ 軽症なの・・・



ドコガ 大丈夫なの?



ドコガ よかったの・・・・・・















「エチゼン・・・?」

「・・・・・・」

「エチゼンッ!!!」

「え・・・なに・・・?」

「大丈夫か?なんか追い詰められた顔してる・・・」

「・・・大丈夫・・・」



桃先輩のベットの隣のいすで いろんな想いを渦巻いていた俺に

心配そうに桃先輩が話しかける。

大丈夫じゃないのに 平気な振りして視線をそらす。

そこには先輩たちがお見舞いに持ってきたフルーツバスケット



「桃先輩・・・りんご食べる?」

「おうサンキュ。もらうもらう!」



いつもみたいに桃先輩は俺に笑いかける。

俺の差し出したりんごを おいしそうに食べて 笑って・・・

いつもの笑顔で。



でも・・・俺のことはわからないんだ・・・







桃先輩が食べている間に 俺は自分のカバンに手を入れる。

ソレを・・・取る。

もしコレを見せたら 桃先輩は思い出すかもしれない。









みんなで取った写真・・・・・・









「これ、見て」



ベットの上にソレを広げる。それはまだ浅い 夏の思い出。

部活風景 山登り 海 合宿・・・

そんな想いのたくさん詰まった写真をがさがさと広げる。



「俺・・・本当に記憶失くしてんだ」



ぽそりと呟いた桃先輩が 手にとった写真。

みんなで山に登ったときの写真。

楽しそうな桃先輩と 桃先輩に後ろからぎゅっと抱きしめられて

頭をぐりぐりされてる俺。



「おまえが、ここにいる・・・」

「いるよ。それ・・・初めて日の出見て、桃先輩が騒いでたときの・・・」

「山に登ったのは覚えてる、写真を撮ったのも覚えてる」

「うん・・・」

「でも、ここに写ってるおまえは・・・」

「・・・・・・もう・・・いいよ」



だめだった・・・

思い出してくれなかった。

桃先輩から直接言葉を聞いて 思わず下を向いた。

ずっと堪えてた涙が出てきそうで。

溢れそうな涙を必死で堪えていると



ガサガサっという音が聞こえた。

少し顔を上げると、桃先輩が写真をかき集めて

俺の写っているそれをひとつずつ、目を凝らして見ていた。



「ちきしょう!!絶対 おまえのこと思い出してやる!!」



そうやって桃先輩は 俺と一緒に写っている写真を探しては

穴が開くほど それを見つめていた。

桃先輩がこんなに頑張ってる。

俺のことわからないのに・・・ううん

わからないからこそ 自分のために 俺のために 頑張ってる。

俺も・・・俺も頑張らなくちゃ。

泣いてるだけじゃ なにも動かない、

動かなきゃ なにも始まらないんだ。



裾で涙を強く拭って 桃先輩の手に取る写真を見ながら

ひとつひとつ 丁寧に説明した。



「痛・・・っ!!」

「も、桃先輩っ?」



次の写真を手に取ってじぃっと見つめた瞬間、急に桃先輩は両手で頭を抱えた。

その拍子に 手に持っていた写真がひらひらと床に落ちた。

それは・・・・・・






















初めてダブルスを組んだときの 写真だった。

























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