俺の意思も受け入れられず、体はずるずると引きずられてどんどん道を進んでいく。
木の茂みに入ったり、ブロック塀の上を歩いて、隣の犬にほえられて、
俺はびくっと体をこわばらせた。

「にゃはは〜おチビちゃん怖がり屋〜」

馬鹿にされたり、ちょっと怖かったりもしたけど、こんな冒険が少し楽しくもあった。
案内者がいる冒険は、どんなにスリリングでもわくわくする

「あ〜ちっきしょ〜やっぱり足痛いや・・」
「足、どうかしたの?」
「んとね、今日ケンカしたからさ、ケガしちゃって」
「ケンカって、飼い主と?」
「まっさか!大石と俺はいつでもラブラブだもん♪」

・・・・・よく平気でそうゆうこと言えるなぁ。
ちょっとうらやましいけどさ・・。

「ボロい空き家に住み着いてる猫がいてね、
 ずーっと前そいつがケンカ売ってきたんだけど、俺負けちゃってさ、
 今日こそ仕返ししてやる〜〜って思って家抜け出したら、今日またやられちった・・」
「・・なんか、痛そうっすね、それ」

隠そうとしてたけど、引きずってる足はとても痛そうに見えた。

「平気平気、大石にあとで見てもらえば大丈夫♪大石は名医だからねv」
「お医者さんなの?」
「うん!大石は病気でもケガでもなんでも治せちゃうんだから!」

飼い主のことをこんなに生き生きとしゃべれるなんて幸せだな・・
ちょっと前の俺だったらそう思ってたかも。
今は負けないくらい俺だって幸せなんだからね。
でもお医者さんなんだ、すごいなぁ。俺が病気しても治してくれるかな。

「ふあぁ〜・・おなか空いたねぇ、おチビ〜・・」
「うん。いっぱい歩いたし」
「そんじゃあ早く帰っていっぱいゴハンもらわなきゃね〜」
「英二先輩のおうちまで、まだ遠いんすか?」
「・・・おチビちゃん?」
「え、なに」
「何で俺がセンパイなの?」
「それは・・・ぇと・・呼びやすいから・・。ダメ・・?」
「ううん!全然いいよ!!センパイってなんかカッコイイし!呼ばれたことないし!」

英二先輩は目をキラキラさせて喜んだ。

「よし、そんじゃあ!ちゃんと先輩の後着いてくるんだぞ!」
「ぅ、うん」

単純で素直なところとすぐ調子に乗るとこ、ちょっと桃先輩に似てるかも。
ふとそんなことを思ったら、またちょっと桃先輩が恋しくなった。








「到着〜!ココが俺んちだよ〜ん。」

ココが・・・。
・・・桃先輩んちよりずっと大きい。
見上げた家はお庭もついてて、二階建ての家。
へぇ、こんなところに住んでるんだ。
一人暮らしの桃先輩のうちはアパートの一室。
もちろんあの部屋が嫌なわけじゃないけど、自分が住んでるところと違うもんだから
まじまじと視線を上へ向けてしまった。

「コラ、英二!!!」

びくっ!
突然聞こえた来た大声に、思わず体が跳ね上がった。

「やべッ。見つかっちった〜・・・」

英二先輩がこっちを向いてぺろっと舌を出した。
すると、その聞きなれない声の主が、ずんずんこっちへ向かって来るのがわかった。

「うわ〜〜大石許して〜〜!!」
「今度抜け出したらどうするって言ったっけ、英二」
「さ、さぁ・・わかんにゃいv」
「とぼけるな。ゴハン抜きって言ったよな?」
「そ、そうだっけ・・・?」
「それに、隠したって無駄だぞ。またケガしてきたんだろ」
「えへへ・・バレちった?」
「本当におまえはおてんばなんだから」

なぁんだ。この人もうち抜け出して冒険してたんだ。
そんなことを思っていたら、飼い主の人と目が合った。

「あれ、こんにちは」
「こ、こんにちは」
「こちらは英二のお友達?」
「あ、うん。おチビちゃん」
「おチビちゃん?」
「あ、越前リョーマっていいます・・」
「そうか、リョーマ君よろしくな」
「よろしくっす」
「俺は大石。この家に英二と住んでるんだ」

英二先輩に怒ってたときはちょっと怖い人だと思ったけど、
俺に笑顔を見せてくれた。やさしそうな人。

「英二、リョーマ君とはよく遊ぶのか?」
「ううん、今日初めて会ったの。おチビ、迷子になってたから拾っちったv」
「迷子?それなら英二、ちゃんとおうち探してあげたのか?」
「え、っとぉ・・・」
「おまえは〜〜ッ」

ごめんなさい〜〜、と必死に猫をかぶって謝る英二先輩。
すると、眉をしかめていた飼い主もそのうち頬を緩めて、

「しょうがないな。」

そう言って英二先輩を下ろしてあげた。
ふぅん、いつもこうやって逃げてるんだ。

「ヘヘッ。ねね、大石〜おなか空いちゃった」
「はいはい」
「あ、おチビにもなんかあげて?」
「じゃあ、食べ終わったら一緒に探してあげような」
「うん♪」

英二先輩は笑顔で言うと、ぐうっと伸びをした。

「ん〜ッッ!これでやっとゴハン食べれる♪待っててね、今大石がゴハンとりに行ってるから」

英二先輩はこの庭先でゴロンと寝っ転がると、すりすりと芝生に頬ずりした。
それが気持ちよさそうで、俺もゴロンってなって大の字になる。
ん〜〜〜気持ちいい・・・・・。
ゴハンがくるまで少し寝ちゃおうかな。
太陽の光を浴びて、少しうとうとしていると、



「リョーマっっ!!!!!」


俺の名前を呼ぶ聞きなれた声がものすごく近くで聞こえた。












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