「今日もいいこでお留守番頼んだぞ」

いつも待ってるキッチンから見える玄関には何の気配もない。
しーんと、静かな廊下。
だから、今日はベットに寝っ転がってごろごろしながら、あなたの帰りを待つ。
桃先輩が拾ってくれた日から、もう2週間近く経つ。
「まだ帰ってこないのかな・・・」

不安になりながら、ベットのスプリングをきしませる。
天井の色はきれいなクリーム色。
お気に入りのまあるい赤ぶちの時計はもう7時過ぎ。

「早く帰ってくるって言ってたのに」

むすっと膨れながら、二人で一緒に使っている枕を抱きしめる。

「おなか減った・・・」

今朝食べたのはめだまやきだった。
お昼は桃先輩が作っておいてくれたやきそば。
今日の夜は?って聞いたら、好きなもの作ってやるって言ってたのに。

「桃先輩のバカ・・・」

ひとりでいるこの部屋はとても広くて、取り残されてる気持ちになる。
ふたりでいればそんなことも全然気にならないのに。
ため息をついてから、ベットにうつぶせになる。

・・・ももせんぱいの匂いがする。
昨日の夜を思い出す。
やさしい声とあったかい腕に包まれて眠った昨日。
もうあれは嘘だったかのように、つめたいベット。
桃先輩のにおいは大好きだけど、それだけじゃ・・・ものたりない。

「・・・早く帰って来てってば・・」

うっすらと涙がにじむ。
ねぇ、ひとりにしないで・・・。






桃先輩に飼われる前に、俺は一度飼われていた。
いつも決まった時間にごはんをくれて、
いっぱい遊んでもらって、いっぱいなでてもらって、
大切に大切にしてくれたのに・・・
信じてたのに・・・


すりよっても、離れてく。 ねこじゃらしを持ってっても、遊んでもらえなかった。
頭をなでられながらひなたぼっこができなくなった。
最後には、ごはんも・・・
もらえなくなった。



俺は、必要とされなくなった。










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