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少しくらい離れたって・・

・・・・・・平気なんだから。






「キレイだな、桜」
「まぁ、ね」

証書の入った黒い筒を持っているだけなのに、なぜかこんなにも大人びて見える。

「お前に最初に会ったの、あそこだったんだぜ」

桃先輩が指す先にあるのは、1本だけ寂しげに立った大きな桜の木。
第一印象は最悪だったけど、最初に言葉を交わした場所。
それを愛しそうに見つめながら、桃先輩はやわらかく笑った。

「知ってるよ」
「素直に相撲部に歩いてっちまうんだもんなーくくっ」
「桃先輩の性格知ってたらあんなヘマしなかった」
「あれから2年も経つのか」



思い出話なんてしないで欲しい。

息をする暇もないほど、焦がれてた。
思い出話なんかする暇もないほど、毎日が彩られていた。
同じような毎日でも、毎日いろいろな色を経験してきた。
赤や黄色やオレンジなんかの色が毎日めぐって、

だけど今日はいつもと違う。
やさしい色なのに、切ない色。

――――さくら色


「部活一緒にできないからって泣くなよ〜」
「その程度で泣くわけないでしょ。馬鹿馬鹿しい」
ぽんぽん。

「なに」
「いや。相変わらずウソがへたっぴだなと思って」
「・・叩くよ」
「あーごめんごめん!」

嘘だってわかってるなら、いちいち言うなよ馬鹿。
一言多いんだから。

「俺、今まで黙ってたんだけど・・高校入ったら一人暮らししようと思ってんだ」
「え・・・・・・・・・?」
今さらっと言ってくれたけど、

「なにそれ・・はじめて聞いた」
「おう。初めて言った」

  だからいつでも泊まり来いよ、待ってるから

肩を軽く抱かれ、耳元でそっと優しく囁かれた。
しまった、と思った。
油断してたら、その隙間にやさしさが流れ込んできたみたいで、
不安になっていた気持ちが水のように湧き出てきた。
震える肩を桃先輩は強く抱いていてくれた。
ずるい。ずるいよ、そんなの・・・。

―――ずっとここにいてくれるの?

そんな想いを込めて見上げると、太陽の光が反射して俺の涙を照らした。
その瞬間、桃先輩の顔が近づいて、軽く唇が触れた。

「ずっと一緒だからな」

次は額にキス。
今度は指で俺の涙を拭って、優しい笑顔が降ってくる。

あぁ・・・。
好きで好きでしょうがないんだ、俺。
この人のこと。
泣いてしまうほど、この人の一言でこんなにも心が舞い上がってしまうほど。
大好きなんだ。。。

  居座ってやるから。

ぐいっと服をつかんで伸び上がって、耳に唇を寄せる。
まだうっすらと涙が残ってている瞳で見上げると、

「上等!」

桃先輩は極上の笑顔で笑った。





別れの季節も、俺たちにとっては新しい自分とあなたとの出会い。
これからもずっとお幸せに。





















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