自分でも気づかなかったのに、あなたはそれに気づいてくれて。
そんなあなたは俺にとことん甘くて。









どうしたの









「38、6。今日は絶対安静だからな」
「はい・・」

無理に起き上がろうとする俺をベットに押し付けて、桃先輩は少し強めの口調で言った。
季節の変わり目で気温が急に下がって、風邪を引いてしまった。

「ごめんなさい、桃先輩仕事・・」
「俺じゃなくて、自分の心配してろっての。ほら、食べるか?」

桃先輩の作ってくれたおかゆを食べるために俺は体を起こした。
自分で持って食べることもできたけど、スプーンを取りフーフーと冷ましている様を見て、
俺は桃先輩に甘えることにした。

「はい、あーん」
「あー」

口をあけるとちょうどいい温度のお米と塩味。
でもやわらかすぎるからおかゆはあんまり好きじゃない。
思わず眉間にしわが寄る。

「んな顔しねーの。おいしいだろ」
「味は好きだけど、やわらかすぎる」
「おかゆってのはそーゆーもんなの」

次から次へと食べさせてもらって、最後にいっぱい水分を取るように言われた。
今日はずっと桃先輩が俺の主治医だろうから、俺は大人しく頷いた。

「それじゃ、ゆっくり寝ろよ」

え・・
立ち上がって、桃先輩は部屋から出て行こうとする。
何とか呼び止めようとすると、桃先輩がくるっと振り向いた。

「あぁ、なんかあったら内線ならせよ。子機置いとくから」

枕元に電話を置いて、桃先輩はドアに手をかけた。

「・・・って」
「・・ん、なんか言ったか」
「・・・待って・・いかないで」

のどから押し出すように出した声に桃先輩は、立ち止まった。
やっと出せた俺の声は涙声で、自分でも恥ずかしかった。

「越前、どうした」

俺の隣にまた腰を下ろして、桃先輩は汗で張り付いた俺の髪をわけた。
頭をなでて、頬をさわって。

「風邪引くと寂しがりやになるのってほんとだな」

俺のことなんか全部お見通しみたいな顔して、桃先輩は俺の手を握った。

「手も熱いな」

ぎゅっと握っていてくれるだけで、さっきの寂しさが癒されていく。
またこの手が離れていかないように、俺は精一杯握り返した。
でもなかなか力が入らなくて、強く握り返せない。

「安心しろよ。寝るまでずっとここにいるから」
「・・本当に?」
「うん」
「絶対に」
「うん、絶対」

俺は桃先輩がいないと生きていけないんだな、って教えられたようで。
少しだけ不安になりながらも、この暖かさが大好きで。
手のひらから伝わるこの感じを感じながら、目を閉じた。































100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!