たまには一人で寝てみない?
それはごく普通のことだけど、俺たちにとっては結構貴重な体験で、









そばにいるよ









少し離れたベットにもぐりこんで、手足をいっぱいに広げる。

「うわー広い」
「広いなー」

バタバタ魚みたいに動いて、ベットの真ん中に転がる。
枕を一人で占領するとすっきりとした香り。
せっけんと太陽の匂い。
すごくそれが気持ちいい。

「電気消すぞ」
「うん」

桃先輩は少し遠くてここにはいないけど、布団を握り締めて目をつぶった。
たまにはこうやって一人で眠るのもいいかもしれない。
―――――その時は心からそう思ったんだ。





あんなに眠たかったのに、夜中にいきなり目覚めてしまう。
それは思い出すのも怖いくらいの恐ろしい夢を見たから。
目を開いても閉じても変わらない暗闇。
天井が押し迫ってくるような不安。
不安が募るほど、見えないものまでが見えてきそうになる妄想。
自分から落とし穴にはまっていくような感覚。
金縛りにあってもいないのに動かない体。

どうしよう・・怖い。

怖い夢なんて何年ぶりに見たんだろう。
こんな夢見るなんて、まるで子どもみたい。

桃先輩と離れて寝て、これもいいかもなんて思ったのに、
なんでそんなときに限ってこんな夢を見るんだろう。

すっかりさめてしまった目には睡魔は全く寄り付かなくて、
俺は勇気を振り絞って、ベットを出た。
数歩歩けば桃先輩のベット。
布団がゆっくり上下に動いて、桃先輩はぐっすり寝てる。

「・・・起きないよね」

こっそり桃先輩のベットに入り込む。
桃先輩が触れてない部分だけが冷たくて、ぴたっと桃先輩に体を寄せる。
それだけじゃなんだか足りなくて、腕を探し出してぎゅっと握り締める。
桃先輩の体温と匂いと、寝息を近くで感じられて、やっと俺は胸をなでおろした。
俺は手繰り寄せた長い腕を抱きしめるようにして本日2度目の眠りについた。






眩しいと感じれるのは朝が来たからで、
いつもはうっとうしい眩しさが少しだけ嬉しかった。
でも瞳をうっすらとあけると、それ以上に嬉しそうに笑う桃先輩がいた。

「なぁ、越前一人でさみしかった?」
「ち、違うよ。怖い夢見ただけだもん」
「だから、さみしかったってことだろ」
「怖かっただけだよ」
「おーおー強がっちゃって」

なんだよ。
俺が怖かったときでさえ、ぐーすか寝てたくせに。

「怖い夢見せて、俺と一緒に眠らそうって作戦だったんじゃねーの」
「誰の」
「おまえの頭がそうさせたんだぜ、きっと」
「桃先輩の頭は都合よすぎっすよ」
「はは、そうかも」

でも桃先輩のそばに行った途端に安心して、そして睡魔が襲ってきたのも事実だから。
心の奥では桃先輩の寝たかったのかも。
・・一日も持たないなんて、俺って相当重症・・かな。

「怖くなったらまたすぐ俺に抱きついてこいよ、ずっとそばにいるからな」
「またすぐ・・って桃先輩」
「なにかな、越前くん」
「・・起きてたの」
「あんだけぎゅうぎゅう抱き締められちゃな〜でもすっごい嬉しかったぜ
 寝たフリ続けながら、抱き締めんの我慢するってホント辛いぜ」

バカ・・なんで我慢なんかしてたの。
抱き締めてくれた方が嬉しかったのに・・。

悔しいからそんなことも言えず、
俺は頭まで布団をかぶって桃先輩に噛み付いてやった。































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