「越前、」 「ん、なに」 「なんだ、起きてたのか」 「うん、」 ぴったり肌同士がくっついたままで、どうやら越前は目を覚ましたらしい。 可愛い寝起きの声が越前をさらに幼くする。 日の光が差し込む、時計の針はまだ7時。 日曜日の朝はこんなに時が進むのがおだやかだ。 「ねぇ、まだ眠い」 俺のほうを向いて、ぎゅっと腕にしがみつきながら越前はもぞもぞと動く。 いつもからは考えられない甘えんぼで、それが可愛くて可愛くて、 守るようにぎゅっと抱きしめ返す。 「ぐ・・桃先輩、苦しいってば」 「はは、我慢しろ」 ふと考えてしまう。 いつからだろう、こんな自然に触れ合えて、こんなに当たり前のように一緒にいれて、 こんな安心した気持ちになれたのは。 「桃先輩、なに笑ってんの」 「な、越前。俺たちはじめて手つないだときのこと覚えてるか」 「手・・・」 チャリ乗るときや、肩を組んだりして触れ合ったことはあっても、 まだキスもハグも、ましてや体をあわせたことなんて経験もしてなかったあの頃・・。 まだ付き合い始めて間もないあの頃。 それまで普通に接していた越前が、付き合うことになったのをきっかけに、 急によそよそしくなってしまったり、頭をなでただけで敏感に反応したり、 思い出せば出すほど、その記憶は鮮明によみがえる。 「手つなごって、桃先輩がしつこかったのはよく覚えてるけど?」 「しつこいって、オマエなぁ」 「だって、なんでそんな手つなぎたいのかわかんなかったし」 「そりゃぁおまえ」 繊細になってしまった状態の越前に、いきなり抱きしめたり、 キスしたりしたら嫌われちまうからだろ 「なんつーか、おまえにさわりたかったんだよ」 「・・桃先輩がそうゆうこというとやらしい・・」 目を細めて言う越前に、 「そうゆうおまえは夜になるとやらしいぜ」と言ったら叩かれた。 いってぇ!べちっていったぞ。 服の上ならともかく、素肌だぞ、素肌。 ちょっと拗ねた越前は、今度は俺に背中を向ける。 目の前にある小さな背中をつっついてやると、びくっと反応してくるんとまたこっちを向く。 にひひっと笑う俺に対する越前は、可愛い瞳をうるませて怒っていて。 あー・・・やべぇ、マジかわいい。 そんな衝動に駆られると、勢いはとまらなくて、越前の体を引き寄せて口付ける。 いやいやと、俺の胸をドンドン叩いている越前の力は次第に抜けていき、 熱い唇が絡み合う。 「・・・桃先輩の馬鹿」 「っも〜〜〜越前、最っ高っ」 耳まで赤くして、恥ずかしそうにする越前が、 はじめて手をつないだときの越前と重なった。 ときは経っていても、ずっと今のままの越前でいろよ? 綺麗な過去を胸に秘め、俺たちは幸せな未来へきっと歩いていける。 大好きな人とのはじめてはなんでもドキドキのリョーマ君。 |