「桃、おまえって変わってるよな」 と、荒井に最近よく言われる。 なんでも、普通は話しかけないようなやつに話しかけたり、 みんなが嫌ってるやつを、俺は逆に好きだったりするらしい。 「あの生意気な1年と一緒に帰ってるんだろ?」 「越前だろ。おまえもそろそろ名前覚えろって」 「よくあんなやつと一緒に帰る気になるな」 「俺通り道だし、アイツ遅刻魔だかんな」 「別にお前がそこまでしてやる必要なくねぇ?」 俺はアイツになにかを「してやってる」なんて思ったことがないから、 逆に俺は、「おまえがそこまで気にする必要なくねぇ?」と思う。 「まぁ、俺はやさしいからな♪」 そうやって笑って話をごまかして、越前を迎えに行くことにする。 アイツ遅れっと機嫌悪くなるから。 人の波を抜けて越前のクラスへと急ぐ。 しかしたどり着いた頃には、クラスには越前しか残っていなくて、 一人ぽつんと机に突っ伏していた。 頭を軽くなでて起こしてやると、案の定予想通りの表情の越前がいた。 「遅い・・」 「わ、わりぃ」 越前は立ち上がると、スタスタと一人歩いていってしまった。 おいおい、そりゃーねぇだろう。 そのあとも越前はずっとどこか不機嫌でいた。 「なぁ、なんかアイツまた怒ってねぇか?」 「あー・・俺が迎え行くの遅くなっちまったっからな」 「・・・はっあぁ。ホント懲りねぇなぁ、おまえ」 余計なお世話だっつーの。 「普通それって逆ギレしていいところだぜ?」 まぁ、普通はそうだし、さっきは俺もムカついたけど、なぜか怒る気にならなかった。 それはアイツがなんだか・・・ 「桃先輩!」 「あれ、越前いたのか。どうした」 「・・部長が呼んでる」 「げ。マジで?わりぃ荒井、行ってるくるわ!」 「おう」 帰り道、越前は静かになってしまっていた。 「越前、部長俺のこと呼んでなかったってさ」 「へぇ」 「へぇ、っておまえ。俺呼んでるって誰に聞いたんだよ」 「部長」 ・・・まただ。 教室で見せたときと同じ表情。やっぱりこいつ。 「今日さ、遅れちまってごめんな」 なんでわかったの?って顔で俺を見上げる越前。 「明日はダッシュで向かうからさ、今回は許して?」 生意気だとか、自分勝手だとか 「・・許してあげるよ、」 嫌われ者だとか、無口だとか、愛想が悪いだとか、 「よし、家まで飛ばすからしっかりつかまってろよ!!」 それは全部不器用なこいつなりの甘え方で、 「明日も迎え行くから、ちゃんと起きて待ってるんだぞ」 「・・うん」 ただ、さみしかっただけなんだよな? 「それじゃまた明日な」 そう言って別れる間際に越前は、 俺も引き止めたくなってしまうほど切ない表情をする。 「また、あした」 越前が隠そうとすればするほど、俺には手に取るようにコイツの気持ちがわかる。 コイツは嘘つくのが下手なんだ。 「そうだ越前、明日は寄り道して帰ろうな。」 「寄り道?明日?」 「ん、なんか用あるか」 「んん。ない」 「よし、それじゃ楽しみにしてろよ♪」 「うん・・」 越前はうつむいていたけど、表情に哀の色はなくて、 嬉しさを隠しているようだった。 まだまだ素直になれない不器用な越前。 やっぱり、コイツをほっとくことなんてできねぇんだよなぁ〜 |