突然迷い込んできた一匹の黒い蝶。 この小さな生き物が今の生活を全部変えてしまうなんて、 あの時は想像もしてなかった。 「一護、」 言いにくそうに、小さくルキアがつぶやく。 振り向いて目を見ると、申し訳なさそうに視線を俺に合わせた。 「最近、疲れてないか」 「?・・どうゆう意味だよ」 「最近、虚退治ばかりだろ。こう毎日だと疲れないか?」 それは隠れていたルキアのやさしさを垣間見たような、 ひどく俺を思った言葉だった。 「疲れんのはおまえも一緒だろ」 「それはそうなんだが」 なにが言いたいんだ。 眉をしかめて向きなおると、ルキアは何も言わずに黙り込んでしまった。 たまにわかんねぇよな、こいつ。 「いいんだよ。おまえはそんなこと気にしねぇで」 下を向き気味な額を突っつくと、そこを抑えながら、 ルキアはやっと顔を上げた。 「おまえの力吸い取ったの俺はの方だし、おまえには借りがある。 それに虚退治は俺が好きでやってんだ。今更おまえらしくないぞ」 会ったばかりだというのに、命を懸けて、家族を、俺を護ってくれた。 ルキアは命を落としかけた。 そのことに比べれば、これくらいの疲れ、どうってことない。 「おい、聞いてんのか」 「・・すまぬ、ちょっと・・・」 コテっと、俺の肩に頭が落ちてきた。 「なんだ、眠いのか?」 「あぁ」 「寝るなら、ベット使えよ」 「いい。仮眠程度・・だ・・・・・・・」 すぅすぅ・・・。 ・・・寝ちまった。 ばか、おまえの方が疲れてんじゃねぇか。 バランスを崩して落ちそうになった体を支えて、肩を枕代わりにしてやる。 「しょうがねぇな」 ため息をついて、ルキアを見やると、その瞳は閉じられて、 いつも口うるさい女がこんなにもおとなしい。 初めて見る寝顔はいたいけな少女の顔だった。 いつも喧嘩ばかりでまともに顔をあわせるときは、 お互いいつも眉をつり上げてる顔ばかりだった。 こいつでもこんな顔するんだ・・・ なんだか珍しいものを見た気がして、 俺は、ルキアを起こさないように、 少しだけ笑った。 初イチルキ。 おひるねしてみました。 |