当たり前になってた。
俺は毎日桃先輩に好きって言われて、
そして俺は何回言われても慣れることはなくて、赤くなってしまって下を向く。
うれしかったから、はずかしかったら、言えなかった。
俺は『好き』を一度も・・・・・・。


「桃にちゃんと愛情表現してあげてる?」

桃先輩が落ち込んでいるとき、不二先輩に言われた一言が俺の胸に突き刺さった。
なんでそんなこと俺が・・って言いたくなったけど、途中で息が詰まった。
そうだ、俺。
桃先輩に好きって言ったことないんだ。

「越前この前女の子にコクハクされてたでしょ。桃、見てたみたいだよ」

桃先輩の元気がないのはそのせい?
コクンと不二先輩がうなづいた。

桃先輩はいつも俺に『好き』を伝える。
俺が、恥ずかしいからもう言うなって言うと、言い足りないって返してくる。
それなのに俺はまだ自分の気持ちを伝えてない。
桃先輩が今落ち込んでるのは、気持ちをちゃんと伝えない俺のせいだ。
・・・俺はなにしてたんだろう。
突然襲ってきた不安。

「ほら、しっかりイイワケしてきな」

しっかりしろと部長に活を入れられて、20周を走り終えた桃先輩が帰ってきた。
荒い息で水道に向かう桃先輩に、俺は必死で駆け寄る。

「も、桃先輩!」
「ん?あー越前、どうした」
「あ、あの・・」

告白するときってこんなにドキドキするんだ・・。

「俺・・・桃先輩のこと好きだから」
「え、越前?」
「だから、不安とかに・・なんなくていいから!」

桃先輩の目なんか見れなくて、たぶんコンクリートに向かって言ってたんだと思う。
体は固まって、このあとどうしたらいいのかなんてわからなくて、
俺はただ桃先輩の反応を待つことしかできなくて。

「あー・・越前。どうした、いきなり・・」

桃先輩が近づいてきて口調はいつもと同じだけど、
なんだかたどたどしくて。
桃先輩、もしかして、照れてるの?

「も、桃先輩が元気ないの俺のせいだから、そんなことないって言おうと思って・・」
「ありがとな、越前・・なんか俺、今すっげぇ嬉しいんですけど・・・」
「だから、元気になって・・クダサイ」
「越前、思いっきり抱きしめていい?」
「ば、ばかっ!なに言ってんの」

カチカチの体を必死で動かして桃先輩に背中を向ける。

「戻るよ、コート!」

どうしよう。このあと桃先輩の顔まともに見れない。
もう言ってしまった本当の気持ちはもう取り消せなくて、
どうしようどうしよう。そればかりが俺の頭をめぐりめぐった。


「ちゃんと言えたじゃない」

にっこり微笑む不二先輩が目の前に居た。

「み、見てたんすか!?」
「うん、しっかり。気づかなかったの?あんなに近くに居たのに」

さ・・さいあくだ・・。

「越前可愛かったよvあーあ、桃なんかにもったいないなぁ」
「で、でも桃先輩にちゃんと言ったから、もう問題ないっすよね?」
「うん、大丈夫だよ。ねぇ、あの桃見てよ、すっごい嬉しそうだね」
「・・・・・・///」

遠くでありえないほどはしゃぎまくっている桃先輩に、
菊丸先輩が突っ込みをいれている。
その時桃先輩と目が合ってしまって、とっさに視線をそらした。

「桃ににっこりしてあげなよ〜」
「や、やだっ」
「・・っはぁ。初々しくてこっちが照れちゃうよ」

その言葉に、俺はなにも言い返せずにいた。
・・でも、きっと桃先輩はこれで元気になってくれるよね?

そして、本人に向かって口に出して初めて言った『好き』
その好きが俺の中で、また大きくなっていった気がした。









後日談。

桃城「てか、なんで元気がなかったのが越前のせいだった思ったんだ?」
越前「だ、だって不二先輩が・・!」
桃城「不二先輩?」
越前「俺が告白されるとこ、桃先輩が見て不安になったって言ってたから・・」
桃城「っ!?おまえ告白されたのか!?」
越前「はぁ?」
桃城「俺、そんな現場見てねぇよ!」
越前「なにそれ!!!あれ、嘘だったってこと!?最低・・っ」
桃城「はぁ・・やっぱり越前モテんだなぁ〜」
越前「やだ。なんで・・これじゃ自爆・・」
桃城「んーでも全然俺不安になんねぇよ。越前から愛の告白聞けたしvもうそれだけでシアワセv」
越前「じゃ、じゃあ!なんであの時元気なかったの!」
桃城「あ、あれね。歌番組ビデオ撮り損ねたんだよ」
越前「は?ソレだけ?」
桃城「それだけ」
越前「〜〜〜っっ!!・・そのくらいであんなに落ち込むなバカっ!!」(殴)
桃城「ってぇえええ!!」








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