誰かの背中の上で揺られていた。
道をゆっくり歩く音と揺れが夜風と調和して、とても心地よい。

「っ・・・!?ここはどこだ!!」
「うわっ!テメーいきなり起きんな、つーか暴れんな!」

我に返ってとび起きると、一護が慌てて落ちそうになった私の体を支えた。
何故だ、6限は退屈な英語という教科で、異国の言葉に興味のない私は、
机の上で肘をつきながらひたすら時計の針を目で追っていたはずなのに。

「もっと静かに起きれねぇのかよ」
「一護、わ、私は・・」
「ったく、寝すぎなんだよ、おまえは」
「寝ていたのか、私は」
「6限の途中から今までずっとだぞ、掃除もホームルームも起きやしねぇし」

そういえば・・今日は掃除もホームルームも受けていない。
あの騒がしいクラスで私が起きないはずないと思ってはいるが、
現に今はもうひんやりとした夜で星が出ているし、私は一護の背中の上にいる。

「降ろせ、もう歩ける」
「るせぇ。いいから乗っかってろ」

怒ってるんだか、やさしいんだか、そのかみ合わない態度が私には不思議でしょうがないが、
一護らしいと思える瞬間でもある。

「何故、起こさなかったんだ、今日は掃除があって大変だったのだろう?」

おとなしく一護の背中に乗りながら、つぶやくように問う。

「あァ?んなの、熟睡するくらい疲れたたんだろ。それなら起こさねぇほうがいいだろうが」

起きないだの、暴れんなだの、いろいろ文句を言うくせに、
こいつはこうやって不意に優しい言葉をかけてくれる。たぶん、無自覚なのだろうけどな。

「最近、おまえ薬飲んでるだろ」
「ん、あぁ、飲んでるな」

内魄固定剤か。こいつに見つからないように飲んでいたのに、しっかり気づいておったのか。
そういえば、帰りがけに浦原から、食いあわせによっては眠くなるとか言っておった気がするな。
・・・・・・もしかしなくとも、これが原因か。
それなら、あの騒がしいクラスで目覚めなかったことも納得がいく。

「・・・あんまり危ねぇことすんなよ」
「あぁ、心配かけたな」

人間が死神を心配するなんて、死神が人間に助けられるなんて、
私は現世に来てから、本当に予想外のことばかりが起きる。
だからと言って、嫌なことなど1つもないのだが。

「あー、ハラ減った」
「私もだ」
「あぁ!?あんだけ寝て今度は食うのかよ!」
「馬鹿者、人間生きてれば腹が減るのだぞ!」
「おまえは死神だろうが」

静かな夜に、自分の声と一護の声だけが響く。
背負われているから顔はわからないはずなのに、自然とこいつの顔が想像できてしまうことが、
なんだか愉快に思える。
そしてたわいない会話をしながら、今日も同じ家路に着く。
こんな平和な日が少しでも長く続くように、私は、暖かい背中の上で星を見上げた。













内魄固定剤=義骸との連結を助ける薬(2巻参照)
寝てるルキアを起こさずにずっと寝せといて、星空のあぜ道をおんぶして帰ってくる、
という設定が書きたかった!(長)異様に絵が想像できちゃったんですね、ハイv



















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