桃先輩は俺しか見えてないって、

俺のことが好きだってわかっているのに・・・





――――なんでこんなにも切ない






邪魔だって思うくらい、桃先輩は俺にくっついてくるし、たくさんキスもしたがる。
好きだっていっぱい言ってくれて、俺がわがまま言っても可愛いって笑っていてくれる。
俺とは『本気』で付き合ってるって、言ってくれた。
そんな毎日がこれからも続くってわかっているのに・・・

「桃城君、部活行く前にちょっと話があるんだけど」
「わかった、ちょっと待っててな」

桃先輩を迎えに行ったときに、見かけた光景。
それは、とても自然な男女のやりとりに見えてしまって。

「うん、待ってるね」

桃先輩の用意が終わるまで、可愛らしく待っている女の子。
悪いことでもしたかのように、柱の陰に隠れて動けない俺。

「桃城君、私ね・・」

やめて・・

「ずっと桃城君のこと」

言わないで――




「好きだったんだ」




静まった空気の緊張は、自然と俺にも伝わってきて。
俺は壁を背にして、しゃがみこんだ。
しんとした沈黙を破ったのは、

「ありがとな、」
桃先輩のやさしい声で・・・


「でも俺、付き合ってるやつがいるんだ。」


「生意気なヤツなんだけどさ、今はそいつのことしか考えらんねぇんだ」
その声は、真剣そのもので。

「・・私、待っててもいいかな」

少し泣きそうなソプラノの声にも、
「悪いけど、空きができる予定ないんだわ」

躊躇することなくそう言って、俺の方へ歩き出し始める足音が聞こえた。
女の子のすれ違いざまに、小さくごめんな、って声が聞こえた。
そして、ゆっくり近づいてきたその足音は、俺のすぐ横で止まって。

「越前みっけ」

ふわっと笑って、俺の頭に手をのせる。
まだ立ち上がれない俺に、桃先輩は同じように隣でしゃがんで、

「迎えに来てくれたんだろ?」

手のひらと、桃先輩の声で安心して、少しだけ涙ぐんだ。
俺は顔が上げられなくて、小さくうなずいた。
いつもの桃先輩は誰にでも優しくて、それは俺がいらいらしてしまうほどなのに、

「さっきの、いつもの桃先輩と違った」
「そうか?」
「あんなにはっきり断ると思わなかった」
「なんだ、あやふやに返事にしてほしかったのか?」
「そうじゃなくて」






―――――――・・・嬉しかった。


「前も言ったろ。越前には本気で惚れてるってさ」

・・・・・・俺も
「俺も、本気で惚れてますよ・・」

ふと見上げたら、もう桃先輩しか見えなくて
吸い込まれるように、キスをした。









想いすぎて切なくて。想われすぎて切なくて、痛くて・・・

それでも俺は、この幸せを話したくないと思った。































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