「ねぇ桃先輩、キスしていいでしょ」
「え・・なになに、おまえサカってんの。珍しい〜」

いきなり膝の上に乗っかってきたリョーマに、桃城は驚きながらも、その華奢な体を支えた。
照れて、少し恥ずかしながらキスをねだる時のリョーマの可愛さといったらないが、
こうやって余裕の笑みを浮かべながら迫ってくるリョーマもたまらなくそそられると、
珍しいことと思いつつも、桃城はそんな可愛いリョーマに見惚れていた。

「ね、襲っていい?」

突拍子の無い言葉に、はぁ?と桃城がリアクションをとる前に、
リョーマは油断していた桃城の体を押し倒した。
そして、いきなり倒されたときに思わず出した桃城の声は、
リョーマの唇にふさがれ、言葉を吸い取られてしまった。

「お、おい越前、どうしたよ、いきなり」

押し倒されて不利な立場にいながらも、桃城はいつもと違うリョーマの様子に心配の色を浮かべた。
そしてやさしくリョーマの頬をそっと撫でた。
その途端リョーマは先ほどとは一変、表情を曇らせ桃城の上から退いてしまった。
・・なんなんだ、越前のやつ、俺を襲うんじゃなかったのか。
リョーマにならいいかと体を許す決意を一瞬のうちに決めた桃城にとって、これは少し残念だった。
桃城はひょいと起き上がり、ぶすっとふてくされてベットに座っているリョーマの隣に腰かけ、肩を抱いた。

「な、越前どうしたんだよ、チューするんじゃねぇの?」
「したいんならすれば」

ぶっきらぼうに答えたリョーマの言葉に、桃城は遠慮なくその唇を奪った。
それでもリョーマは頬を染めることもなく、むすっとしたままだ。

「なに膨れてんだよ、自分で襲うとか言っといてよ」
「桃先輩の馬鹿・・」

その発言から言うと、俺が何かしたのか・・?
桃城は少し考えるが手ごろな回答が見つからない。

「なんで桃先輩は俺があーゆーことしても平然としてるの!」
「・・・は」
「なんで焦ったり動揺したり驚いたり顔が赤くなったりしないの!」

段々と声を荒げていくリョーマの方が、少し興奮気味で、声が上擦っていて、少し頬が染まっている。
つーことは、こいつは

「俺をドキドキさせたかったわけ、」

リョーマの意図が手に取るようにわかった桃城は少しだけほっとしつつも、小悪魔のような笑みを浮かた。

「越前てほんとかわいいな、でもな、あんな最初の方で諦めちゃだめだぜ、」

桃城は長い指でリョーマの小さな顎に手をかけ、
自分の方へ向けると先ほどされたようなキスをリョーマにしたあと、
形勢逆転と言わんばかりにリョーマを押し倒した。

「こうやって長期戦でオトさなきゃ」
「ちょ、ヤメてって・・」
「相手が本気で嫌がってないのがわかったら、続きしてもOKって合図だぜ」

弱い力で押し返す腕を掴んで、首筋をぺろっとなめると、
リョーマが我慢した甘い声が少しもれて聞こえた。

「まぁ、でもこの続きは企業ヒミツな。ってことで続き楽しも―――」

しめたとばかりに、桃城がリョーマの服に手をかけようとすると、われに返ったリョーマが
桃城の顎に見事鉄拳を食らわせていた。

「っでぇぇえええ!!!」
「なにシようとしてんの、馬鹿!」

ちょっと雰囲気に飲まれそうになったリョーマが服のはだけた部分を元に戻しながら桃城を睨んだ。

「ひでぇよぉ越前、あんな雰囲気よくしておいて・・越前のオニ!!」
「俺が鬼ならアンタはなんだ!!」

あとちょっとで・・あとちょっとで・・!!と悔しがる桃城を隣にリョーマが言った。

「桃先輩は長期戦て言ってたけど、そんなんじゃ意味ないの。一発でオトせるかを賭けてたんだから」
「一発・・でか?」

顎をさすりながら視線を移すと、リョーマは少しだけ俯き加減で、少しだけ悲しそうな表情に見えた。

「俺は桃先輩に一発でオトされるのに、なんで俺はオトせないの・・・・・・」

悔しそうに下唇をきゅっと噛むリョーマを見ていると、顎の痛みが少しずつ引いていった。
・・越前は、俺を一発でオトしたかったって・・・!!
あんなちょっと辛そうで悲しそうな表情をしながら、必死に俺をオトそうと悩んでいたって・・!!
そして、なにより!!
『俺は桃先輩に一発でオトされる』!!
嬉しい、なんだこれ・・・嬉しすぎる!!!!
みるみるうちに体が熱くなってきて、腕が自然と越前へと伸びる。
そして喉の奥で抑えようとしていた声が一気に爆発する。

「越前、マジ嬉しい。やっぱりおまえ世界一可愛い、つーかもう大好き!」
「わ、耳元でうるさい」

力強くリョーマを抱きしめながら、桃城は嬉しさの絶頂に達した。

「ちょっと!!俺は別に桃先輩喜ばせるつもりで言ったわけじゃないんだから!!」
「最高に嬉しいぞ、越前!!」
「俺の話聞いてってば」

まだまだ嬉しさを表現するには全然足りないが、そろそろ越前が怒り出しそうなので、
桃城は腕を名残惜しく離し、その代わりにリョーマの頭を撫でた。

「聞く聞く、ちゃんと聞くから」
「ねぇ、なんで俺は・・桃先輩にドキドキさせられないの・・」

なんでこいつはこう、余計な心配をすごく気にするんだろう。
俺は越前が好きで好きでしょうがないし、越前もたぶんそうだと思う。
だからこうゆうことを本気で考えるだろう。今の俺たちは、誰が見ても立派に相思相愛だと思う。
でも越前にとっちゃこの問題は深刻で、俺は越前にドキドキしてないと思ってる。
確かに俺の愛情表現は、馬鹿みたいにふざけた告白だったり、普段は俺が越前に迫って、
赤くなるのも余裕がなくなってしまうのも、いつも越前のほうだ。
それでも、俺は息が詰まるほどに越前に魅きよせられてしまうことがある。
そしてそれは決して珍しいことではない。

「越前、俺のここんとこ触ってみ」
「・・?」

桃城は自分の胸の辺りを人差し指で指し、伸びてくるリョーマの手をとり、
自分の胸に押し当てた。

どくん・・どくん・・どくん・・どくん、どくん、どくん

リョーマも桃城もその定期的な音を静かに聴いていた。
そして、それは段々と速度を上げ、リョーマの手をめがけ、心臓が当たりにいっているような感覚さえ持つ。
桃城も手を当てなくても、心臓が自ら意思を持って動いているように感じる。

「も、桃先輩・・」
「自分で触らせといてこれだぞ。さっきおまえに襲われたとき、この心臓どうだったと思う」

男はいつでも余裕を見せたがる。好きなやつ相手だと特にな。
つまりカッコつけたがりなんだ。実際はこんなにその場でいっぱいいっぱいなのにな。

「あーあ、せっかくさっきおまえに体許そうとしてたのになぁ」
「なっ・・・」
「でももうだめだぜ。今日は俺がおまえをもらう」

桃城は再びリョーマの唇をやさしく塞いだ。
甘いキスをたっぷり堪能した後に、とろけそうな視線でリョーマを見つめると、
それを受け入れるかのようにやわらかく笑ったリョーマがいた。

「・・・いいよ」

胸に触った小さな手に心臓が高鳴る。
本人も気づかない無意識の微笑みに幸せな気持ちになる。
体を重ねて、一生こいつを守って見せると決意する。
俺をそんな気持ちにさせる、越前という名のアルカロイド。
もう一生離せない、麻薬のようなおまえという存在。












いつもより長め。そして解説者視点。
慣れないことやりましたが、楽しかったです。
桃城はしゃべりすぎですが(笑)



















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