3年6組、菊丸英二。
その日から俺は、どんどん桃が離れてくように思えました。







「エージ先輩!昼一緒に食いましょ〜!」
「おっけー♪」

菊丸英二2年、桃城武1年。
桃はそれは毎日のように俺の教室に入ってきた。
桃は先輩の校舎に入ってくることに、みじんの怖さも感じてなかった。
となり同士で弁当箱を開けて、中身をのぞき見る。

「エージ先輩タマゴ料理好きなんすねぇ」
「まぁね。大石もタマゴ料理好きだしv」
「・・・ハイハイ、ごちそうさま」
「なんだよぉ〜・・」
「別にノロケ聞きにきたわけじゃないんすよねぇ」
「このやろ〜〜!そんじゃぁ俺と大石のラブラブっぷりをたっぷり聞かせてやる〜〜〜」
「うげっ・・勘弁なんですけど!!」
「言ったなぁ〜!!」

俺が大石の話題を出すと嫌な顔をするけど、
なんだかんだ言って桃はよく相談にも乗ってくれた。
俺と大石が付き合ってるってはじめて告げたときも桃はあたりまえのように
「エージ先輩もやるじゃないっすか」って俺の肩を抱いた。
大石とはもちろん毎日一緒に居たけど、それでいて桃と一緒に居る時間も俺には大切だった。

「大石先輩とケンカしたんすか?」
「だって・・大石が悪いんだもん」
 グチも相談もいっぱいした。

「桃、昨日言ってた新作ゲーム買っちゃったよ〜ん♪」
「はぁ!?なにちゃっかり買ってんすか!俺にもやらせてくださいよー!」
「今日の試合で俺に勝ったらね〜」
 ゲームも寄り道も買い食いもした。

「今日こそ負けないっすからね」
「へへ〜ん、勝てるもんなら勝ってみ〜♪」
 テニスもいっぱいいっぱいした。


そんな楽しいときはどんどんどんどん過ぎていって・・・・・・





「エージ先輩お先ッす!」
「お先ッす」
「うん、ばいばい〜」

最近は桃とおチビの後姿ばっかり見ている気がする。

「エージ?どうかしたのか」
「・・へ。あ・・んん、なんでもない」

桃からおチビと付き合ってることを聞いたとき、
俺はおめでとうって言いながら、俺がされたように桃の肩を抱いて「やるじゃんv」って言ってやった。
おチビはうつむいて顔を真っ赤にして、桃の裾を引っ張りながら、
早く帰ろうよ、って照れてた。
その様子があんまり可愛いからおチビに抱きついたら、桃に怒られた。

「そろそろ俺たちも帰るか」
「そだね」

俺のとなりにはいつだって大石がいる。
大石がとなりにいないことはなかったし、
これからもずっととなりには大石がいてくれるって信じてる。

でも、桃と過ごす時間が極端に減って、胸にぽっかり穴が開いたみたいだ。
すぅっと吹き抜けていく風は追いつけなくて、涼しくて、少し泣きそうで・・・


このことを言ったら、桃は笑うのかな。
大石はやきもちを妬くのかな。
でも俺にはどっちも大切で、そして、おチビも大切なお気に入りの後輩で・・・。
俺はときどきどうしようもない気持ちになる。

だからこの一瞬のときを、かみ締めるようにしながら過ごすんだ。
笑って笑って笑って、おなかがよじれるくらい、苦しくなるくらい。
後悔なんかしないように、やり残すことがないように、
必死で必死で走り続ける。

「大石帰ろ♪ほら〜、早く来ないと置いてっちゃうんだからね〜」
「ちょ、エージ・・待てって!!」



ちょっとフライングして、大石より先に走り出す。
ずっとずっととなりにいるこの人を信じて・・・・・・。











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 □大菊であり、桃リョであり、菊&桃であり、菊丸視点。
  大石も、桃もおチビも大好きなのに・・なんだか、切ない。










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