「忍び会いってドラマチックだと思わねぇ」 桃先輩はドラマとか映画とか影響されやすいってことは知ってるけど、 恋愛に関しては結構ドラマチックとかロマンチックなことが好きでちょっと笑える。 「ほら、おまえは可愛いけど俺らって一応男同士だろ、普通忍んだりするもんじゃね」 公衆の面前で大好きだとか叫ぶような人が言う台詞じゃないと思うんだけど。 「たとえばさ、南次郎さんがおまえの恋愛にすっげぇ厳しい人だったり」 「親父この前桃先輩と酒飲もうとしてたでしょ」 親父は桃先輩がお気に入りみたいで、酔っては付き合いのいい桃先輩を引き込んで絡みまくる。 この前なんか酔った振りして桃先輩まで巻き込む始末。 「それじゃあよ、俺とおまえんちがすっげぇ離れてて遠距離恋愛とかさ」 「桃先輩チャリ3分で飛んでくるじゃん」 桃先輩が会いたい時も、俺が会いたい時も、桃先輩は夜中だろうが構わずチャリを飛ばしてくる。 この前は会いたいって言い出した俺を道で見つけた途端、チャリ投げ出して抱きしめたくせに。 てゆか遠距離は忍び会いと関係ないような。 「とりあえず桃先輩は、もっと障害のあるコイがしたいって。俺じゃ不満だってんでしょ」 「あー馬鹿!全っ然、全っ然違ぇよ!!俺は越前大好きだっての!」 「そうゆうことを聞いてるんじゃないの」 「だからな、したことねぇから1回だけでも経験してみてぇな、って話だよ」 はぁ。馬鹿馬鹿しい。 そんなこと考えたってしょうがないじゃん。 俺たち(何故か)親とかテニス部員(レギュラーのみ)には公認だし、 学年は同じ出なくても家は近いし、毎日飽きるほど会ってるし、 忍び会いなんてもの期待しなくても、絶対ありえないでしょ。 それに、毎日会えない、キスもできないじゃ、 「桃先輩、そんな生活耐えられないでしょ」 「おまえ、俺だけが耐えられないような言い方してっけど、越前だって耐えられねぇだろ、そんな生活」 「へぇ、よくわかってんじゃん」 そうだよ、そんな生活俺だって耐えられない。 ドラマや映画のストーリーには憧れても、やっぱり今の生活が一番いいって俺も桃先輩もそう思ってる。 だから、くだらないけんかをした後に手をつないで、 コンビニ寄ってまた明日って手を離して、今日も軽くキスを交わそう。 今が一番しあわせ |