星がこぼれそうなほどの夜だった。 すうっと冷えた空気が季節の変わり目を告げていて、 寂しい黒い空を彩っているのは、無数の星だった。 それなのに 「星くらいで。おめでたいな、雛森は」 まるで小さい子を見る目で口端だけで笑われた。 私のほうが、背も年も上なのに。 「いいでしょ!だってすごくきれいなんだもん!」 満点の星空を見上げれば、それだけで嬉しくて同意を求めても、 そうだなって、ふっと笑うだけ。 もう、ほんとにそう思ってるのかな、日番谷君。 「でも実際星って言っても、でっかい岩の塊が燃えてるだけなんだけどな」 「もお〜〜〜!そうやって夢のないことを言う〜〜!」 「そう怒んなって」 草原に座って、星を見上げていると隊長だとか副隊長だとか、 普段使ってるカチカチに固められた言葉遣いなんて、とても小さい決まりごとのように思える。 *** 星だけでこんなに無邪気にはしゃげる雛森を見て、やっと今日の仕事の疲れが取れてきた。 その証拠に、ふっと落としたような笑みが自然に出てくるのがわかった。 「日番谷君は空を見て綺麗って思ったことないんでしょ〜〜」 「そんなことねぇって」 ちょっとスネた雛森を見上げると、その綺麗な黒髪が夜空の闇に溶けていた。 瞬く星はその流れる髪の髪飾りに見え、俺に向ける瞳こそが瞬く星に見えた。 そんな雛森を見て、 ・・・綺麗だな と、思わされた。 「シロちゃん?」 「なんだ」 「どうしたの、ぼーっとして」 「雛森・・・」 「なぁに」 「シロちゃんてのやめろって言っただろ」 「あははっ、バレちゃったか」 その呼び名に自然に返事をしてしまった瞬間。 俺はあのころに戻った。 それはまるで昨日のような感覚で、 「桃・・・」 「なぁに」 「そろそろ帰るか」 「うん、そうだね」 気づかない振りをしたのか、気づかなかったのかわからないが、 雛森はその呼び名に反応せずに、腰を上げた俺に引き続いて立ち上がった。 「・・馬鹿。んなくっつくなよ」 「えーいいでしょ〜昔はよく手つないで帰ったのに」 手を伸ばしてくる雛森に仕方なく、俺はその手をとった。 「風邪引く前に早く帰るぞ」 「うん」 子どもみたいに手をつないで、 造られたものひとつない自然の道を歩きながら俺たちは、たまにあの頃に戻る。 そして、大人になるまでのあと少しの時間を、 あの頃の幼い気持ちを抱えながら、少しずつ成長していく。 人工・・無理矢理っぽいですなw 一応、中学生の恋愛っぽいかんじで♪ |