「シロちゃん、おはよう」 「日・番・谷!」 ったく、雛森のやつ。 確かにあのころの俺はただの悪ガキで、死神なんかになんねぇって思ってた。 でも学校入れたら苗字で呼んであげるって言ってなかったか、コイツ。 いや、学校入ったどころか今となっては俺は隊長だぞ。 そんでおまえは副隊長。(信じらんねぇけど) 「あ、ごめんごめん、日番谷タイチョー」 「・・俺が隊長そんなに変かよ」 「だってシロちゃんはシロちゃんだもん♪」 そんな理屈あるかよ、と小さくため息をついた。 でもこんなのは日常茶飯事だから、いちいち気にしてたらきりがない。 「そういや随分早起きだな、なんかあるのか?」 「なに言ってるの、今日は定例集会でしょ。あ!ほらもう遅刻しそ――」 「雛森・・」 「ん、なに」 「今日の集会は明日に変更って、昨日聞いただろ」 「・・・・・あ。」 「つーかおまえが俺にそれ教えてくれたんだろーが」 「そういえばそうだったね!」 昔から抜けたところはあるけど、ちょっと抜けすぎじゃないのか。 いつもドジばっかで泣き虫でいつもにこにこ笑ってて、 でもそのくせ、戦闘になると鬼道の達人だもんな。 そんな意味でも、雛森は昔から見てて飽きないやつだ。 「そうだ、せっかく早起きしたんだからおさんぽしに行こうよ♪」 「おさんぽ、ってオマエなぁ・・」 「いいじゃない。朝ごはんまで暇なんだから」 ね、行こうよと言いつつ、雛森は俺の腕をひっぱる。 「ね!お願い!」 「・・・・・・どこ行くんだ」 「ひみつ〜」 「なんだそれ」 「結構来たな」 「うん、でももうついたよ」 川のせせらぎが聞こえる。 草のささやきが聞こえる。 ここは・・・ 「なつかしいでしょ、ここ」 「あぁ、そうだな」 朝は木の実を食べた後にここにきて遊んだ。 昼は魚を取って、夕日が出るまで走り回っていた。 言わば俺たちが育ったような場所。 川べりに座って静かに水の音を聴いていると、名前を呼ばれる。 「シロちゃん、」 「ん」 俺をそう呼ぶ雛森の声があの時と重なったせいか、 そう呼ばれるのが当たり前のように思えて、いやな気持ちがしなかった。 「シロちゃんはずっとシロちゃんのままでいてね」 「なんだよ急に、」 いきなりこんな場所につれてこられて、そんなことを言われれば、 雛森が今、どんな気持ちでいるかってことはなんとなくわかる。 だけど、俺も同じことを思っていたから、なんだか少し照れくさくなったのかもしれない。 「そうゆうおまえは変われって言われても変われなそうだよな」 「なによもう〜」 あぁ、昔はよくこの百面相がおもしろくてよく笑ってたな。 そんなことを思い出して少しふきだしてしまった。 「ほんと雛森は変わんねぇな」 「それっていい意味、悪い意味」 「さぁな、」 「もう、そうゆうとこ相変わらず意地悪なんだから」 そうやってすぐ拗ねるのも相変わらずって言ったら、さらにへそを曲げそうだから、 口の端だけをあげて、声を抑えた。 「雛森、」 「なに」 「また来るか、ここ」 ん?と顔を覗き込むと、不思議そうな顔をした雛森がいた。 無理もない、俺から雛森を誘うなんて、下手したらこれが初めてだから。 雛森はすぐに嬉しそうに笑って、 「うん、また来ようね」 コテン。 俺の肩に頭を乗せた。 ま、いいか・・・。 あの頃の夕日のように綺麗な朝日が昇る。 清い日雛。純な日雛。かわいいなぁ、日雛。 でも若いのに昔の思い出の話なんてちょっと年寄りみたい(笑) そんな初日雛のおはなしでした〜 |