「レンアイって一種のサービス業みたいなもんだよな」 「なにそれ」 息も途切れ途切れに言った俺の言葉は、越前の涼しい声に当てられた。 季節は初夏。太陽もさんさんで、帰り道の急な坂道は部活後の俺には、心臓破り級にきついものだった。 対する越前は、自転車の後ろでゴクゴクとうまそうにファンタを飲んでいる。 「今の俺たちの状況のこと言ってんだよ」 「なに怒ってんの」 「別に怒ってねぇよ」 あまりにもきつい状況に怒ってるみたく言っちまったけど。 いや、実際ちょっと怒っている。 だって、俺はこんな必死こいて自転車こいで、頑張ってるってのに 越前ときたら当たり前みたいに涼しい顔で、俺の背中の影で悠々とファンタ飲んでる。 それを思うと、太陽の日差しに煽られて、イライラが増してくる。 「桃先輩」 次は何を言われるかと、なんだよ、と声を荒げた途端、 越前の顔が一瞬で俺に近づき、 唇をさらっていった。 「・・・・っ!?」 状況がまだ把握できてないのに、今度は腰に腕を回しぎゅうっと抱きついてきた。 「家まで運転頑張ってくれたら、あとで俺に何してもいいから」 「・・マジ?」 「まじ」 「なんだよ、サービス満点じゃん」 越前の一言でいつのまにか上擦った上機嫌な俺の声に、越前はクスクスと笑った。 「それじゃ家までマッハね」 「了解」 体調良好。天気は快晴。気分上々。 俺は立ち漕ぎに体勢を切り替えて、走り出した。 桃城は単純なんです。 |