越前が後ろから抱き付いてくるときは、決まって俺にかまってほしいときだ。 ねぇねぇ、と俺の肩口に顔を寄せて、ぎゅうっと体をくっつけてくる。 「桃先輩、」 「あァ?」 ぶっきら棒に言葉だけを返して、俺はうつ伏せで雑誌を読んでいる。 「なにそれ、」 「なんだよ」 「真剣に聞いてよ!」 「だから、なんだよ」 仕方なく振り向いて、越前の様子を伺おうとすると、 ちゅうっと唇を押し当てられる。 「引っかかった〜」 ・・・うわーやべぇ。 なんだよ、こいつ。 越前は俺を騙せたのに満足したのか、ペロっと舌をだして笑った。 誘ってンのかよ・・・っ 「なぁにしてんだおまえは、」 「桃先輩が悪い」 背中に密着したまま、ふてくされた越前の声。 「しょうがねぇなぁ」 向き直って、越前を抱き寄せてぎゅうっと抱きしめてやる。 「じゃあかまってやるよ」 「じゃあ、ってなんだよ」 笑ったり怒ったり拗ねたり、ほんとこいつって・・・。 言葉にするよりも態度で示してしまう。 触れた唇は甘くてやわらかい。 手で触れた頬は少し熱くて、吐息が、鼓動がすぐ近くで聞こえる。 「・・もう、長いってば」 とん、と胸を軽くたたかれてわれに返る。 あぁ、俺キスしてたんだな・・。 自分から仕掛けたくせに、赤くなる越前を見ていると、なんつーか・・夢見心地。 俺、こいつに惚れすぎだよなぁって自分でもあきれるくらい。 いつのまにかこいつのペース。 「わりぃ、」 「別に、謝んなくたって・・ヤじゃないし」 「知ってるよ、んなこと」 笑ってそうやっていると、からかうなって怒られる。 ほら、こうやってまた、愛しさが増す。 くだらない会話がたまらなく幸せに感じる。なんでだろうな。 「好きだぜ、越前」 そんな気持ちでする告白は、いつもの“好き”とはまた違った味で。 越前は返答もなしに、ぽすっと俺の胸に頭を落とす。 ―――俺も、好き。 ゆっくり流れる時間を、この今の気持ちを、 ずっと忘れたくない。 心からそう思った。 あ・・あま・・い。もう別の人ですね、ハイ・・ |