その距離が、永遠のように長い。 「なんだ、」 気づかれないように伸ばした手も、この距離から縮めることは出来ない。 誰だろう、この人のことを鈍いだなんて言った人は。 「・・なんでもない」 伸ばすのをやめた手は不自然に曲がっていて、俺はこの手をどうすればいい。 この気持ちをどうすればいい。 「越前、」 「んー?」 「一緒、帰っか」 「・・っす」 この人はきっと、俺の気持ちを知っている。 その証拠に、一定の距離を保ちたがる。 まるで自分のテリトリーを守るように、必死に。 「桃先輩んちって俺んちから近いっすよね」 「あー、そういやそうだなぁ」 そのテリトリーに踏み込もうとする俺は、門前払いを受けて、追い返される。 それを受けるたびに、痛む傷。 それでも踏み込もうとする気持ちは、止められないほどのものになっていた。 どうしようもない感覚。 「後ろ乗れよ」 「え、」 「え、じゃねぇっつの。置いてくぞ」 それでもこの時だけは、距離が縮まる。 たぶん、今までで一番近い距離。 「それじゃ、また明日な」 言葉もないはずなのに、一緒に共有できる時間はこんなにも短い。 さっきまで誰よりも近かったはずの距離が、見る見るうちに遠のいていく。 「また明日」 小さくなる背中、振り返りもしない背中。遠のいていくテリトリー。 俺はいつになったらその中に入ることができる。 いつまでもその距離を保っていることができる? 生まれてはじめての、心うずく冒険。 今日もまた少しだけ、あなたのことを思い出して眠りにつこう。 たぶん15分くらいで完成しました。 桃←リョの感じで。でも眠い状態で書いたのでなんだかよくわかりませ・・。 |