手が小さいせいもあるんだろうけど、 冬の朝や夕方に触れる越前の手はいつも冷たかった。 「冬っていいよなぁ」 「よくないよ、寒い」 つないでない方の手をポケットに入れて、 鼻先を赤くして越前は言う。 あんな球を打つなんて信じらんねぇほど、越前の手は小さくて細くて、 俺の手の中にすっぽりおさまってしまう。 「桃先輩は冬好きなの」 「あぁ、好きだな」 「この前夏が好きって言ってなかった」 「夏も好きだぜ」 「ふーん」 結局はなんでも好きなんじゃん、って呟かれて、 そうだな、って笑った。 「雪が降るから好きとか、そうゆう理由なわけ」 「まぁ、それもあるけど、人通りが少ないから堂々と手つなげるだろ」 一番の好きな理由を言ってやると、 越前は呆れた顔をして小さくため息をついた。 その表情は風の冷たさで少し頬が染まっていて、まるで照れてるようにも見えた。 「桃先輩のタラシ・・・」 「なんだよそれ」 マフラーに顔を埋めながら、白い息が舞う。 凍えるほど寒くても、こうやって帰る夜は好きだ。 つっても、これを越前に言ったら、俺はキライって膨れるんだろうけど。 なぁ、知ってたか。 手をつなぐとき、ただつないでるってわけじゃないこと。 越前の小さな手を守るように、寒くないように包み込むようにつないでるんだぜ。 「まぁ、あったかいから許してアゲルヨ」 「くく。そりゃどーも」 今日も明日も明後日も、ずっと手をつなげてたらいい。 そこにあるぬくもりで、越前を感じることができるから。 たまには遠回りで、たまには歩いて、ゆっくり道を帰ろう。 そんな日があってもいいだろ? |