夏が終わって、秋が近づいてきた。 日が落ちて、影が伸びてきた。 目をつぶってしまうくらいまぶしい光なのに、なんだかその夕陽は悲しく見える。 自分の影を踏みながら、枯れた落ち葉を踏みながら、 桃先輩の手を握りながら、冷たい自分の手を握り返されながら、 わざとゆっくりと歩いた。 「もう秋だなぁ」 「そうっすね」 「やっぱ〜俺の場合は食欲の秋だな♪」 「そうっすね」 「運動の秋でもいいよなぁ〜」 「そうっすね」 「なんか今日、やけに寒くね?」 「そうっすね」 「・・・おまえ、それ以外言えねぇの?」 「そうっすね」 ぽそっと下を向いて呟くと、なぐさめる様に頭をなでられた。 最初は嫌でしかなかった桃先輩の手も、今はもう心地よい俺だけのたからもの。 「・・・なんだよ。元気ねぇな」 「別に」 秋は嫌いじゃないはずなのに、なんだか寂しい気持ちになるのはなぜだろう。 桃先輩の手をにぎりしめて、ほんのりあったかくて、幸せなはずなのに。 うっとうしかった夏風はもう吹かない。 今俺の頬をかすめるのは、すこし冷たい秋風。 まだ6時にもなってないというのに、周りは少し寂しくて、静かで、 何かが通り過ぎてしまったような。 「もう俺たちが会って、半年以上経つんだな」 指を折って数えると、ちょうど半年と1ヶ月。 その短い間に、俺たちは出会って、笑いあって、成長して、コイをした。 「まだそんなもんしか経ってないんだな」 「そうだね」 もっと長い期間、一緒に居た気がする。 いろんなことがあって、いろんなこと一緒にして。 これからもずっとずっと一緒にいたい。 それなのに、季節はどんどん景色を変えてとおり過ぎ去っていく。 季節が、景色が変わるごとに、桃先輩も一緒に連れ去ってしまうんじゃないかって・・・ こうゆう日にはふとそんな思いが横切る。 俺らしくもない・・・ 「なにジロジロ見てんの」 「わかんねぇけど・・・なんか今の越前の顔、すっげぇソソる。」 「・・・変態」 もう・・・本当に桃先輩には参る。 静かになったと思えば、いきなりそうゆうことを言い出す。 呆れながらも、そうゆうところを見るとちょっとほっとする。 桃先輩はずっと桃先輩のまま。 いつもいつも桃先輩は桃先輩のまま。 ねぇ、ずっとそのままの桃先輩でいて。 「桃先輩・・・」 「ん、なんだ」 「・・・。・・・なんでもない」 桃先輩が微笑みながらまた頭をなでてくれた。 ねぇ、ずっとその手は俺だけのためにとっておいて。 言葉の代わりに、俺も笑顔を返して、ぎゅっと手に力を込めた。 |