あの楽しかった、夏が、終わった。



「お〜よく撮れてんな〜!」
「ほんとだ!ははっ!桃、これこの後コケたんだよねぇ〜ぷぷっ」
「エージ先輩、余計なこと思い出さないでくださいよっ」

合宿で撮った写真が出来上がって、部活前のちょっとした時間にそれを机の上に広げた。
笑ってる写真、はしゃいでる写真、いろんな写真の中にいろいろな表情があった。
みんな同じようでも、ひとつひとつ全部違う写真。
悲しい顔してる写真なんか1枚もなくて、みんな笑ってて楽しそうで、

これはあの時の、この後こんなことがあった。
写真を見ると、その時の気持ちを思いだせる。

「ぁ・・・・・・」

たくさんの写真の下に埋もれていたこの写真。桃先輩とツーショット。
みんな海で泳いでて、そしたらいきなり、一緒に撮ろーぜ!と桃先輩が肩を組んできて、
何故か既にスタンバイ済みの菊丸先輩が、俺たちと海をバックに、撮った写真。
風が強くて、目つぶったと思ってたのに、なんだか、よく撮れてた。


ほしいな・・・
・・・・・・なんてね。


「あ、これ!外人さんに道聞かれて、おチビが道教えてあげたときの!」
「そうだそうだ!初めて越前の英語聞いたんだよなぁ!おまえほんとに英語喋れたんだな!」
「当たり前でしょ。俺向こうに住んでたんすよ?」
「いや、俺日本語しか聞いたことなかったからよ〜」

あの時は、外人さんに適当な道教えたことは内緒。
だって、俺たちだって合宿で遠出してるのに、俺が道知ってるわけないでしょ?
みんな気づいてないみたいだけど。

「桃先輩・・・汚い・・・」
「あぁ!?なにがだよっ」
「だって、これ」

スイカ割りして、夢中になって桃先輩がスイカ食べてる写真。
バックでみんながあきれた顔をしてる。
割った人が、割れた中で一番大きいの食べられるってルールで、みんな真剣になって、
結果、馬鹿力の桃先輩がスイカに止めを刺した。
棒持った途端暴れ出してなきゃ、河村先輩が勝ってたと思うけど。

「くくっ。桃子供〜幼稚園生だってもっと綺麗に食べるよ〜?」
「いいんすよ!!これこそ男の食いっぷりっ!」
「でも、このあと、後始末したのタカさんなんだよねぇ。」
「ふ、不二先輩・・・すみません。」
「ねぇ、タカさん」
「いいんだよ。俺だって棒持った途端、ポイ捨てした見ず知らずの人追い掛け回しちゃったし・・・」
「タカさん、ほんといい人だねv」

見つめあって 河村先輩は照れ笑い。
不二先輩はにっこり。
はぁ・・・なにやってんのこの人たち。

「にひひっ。おチビぃ〜〜」
「なんすか」
「さっきからこれ、ずっと気にしてるべっ。そんなほしいのっ?」

ビシっと指をさす写真。
さっきの、桃先輩とのツーショット・・・。
何回かチラッと見ただけなのに。
それに、そんなでかい声で言ったら・・・

「やっぱり、俺との思い出が一番だよなぁ、越前v」

この人すぐ調子に乗るんだから。
否定はできないけどさ・・・。

「でもさ〜毎年だけど、やっぱり合宿って楽しいよね!俺達もうないけどさぁ」
「そうだね、僕ももっとやりたかったな」
「いいなぁ〜桃と海堂はまだあるもんね」
「俺もあと1回かぁ。もっとやりてぇなぁ。」

3年生はもう合宿はない。

2年生は後1回。
俺はあと2回。
どっちにしろ、このメンバーで行くことはもうないんだなって考えると、少しさみしい気がした。
なんだか、ずっとこのまま俺たちは変わらないような気がして、
来年もまた次の年も、一緒にテニスやって合宿して、遊んで、思い出作って・・・
でも、先輩たちも来年卒業しちゃうんだなぁ、とかいろいろ考えて。
その次は桃先輩たちの番で、そしたら俺の番がきて・・・
あの夏に戻りたいと、もう少しこの時間が止まっていてほしいと、
みんなが笑って離してるその隣で、そんなことを一人考えていたら・・・

「おちびっ。そんな悲しそうな顔しなくても、写真アゲルから♪」
「・・・あぁ、ほんと俺って愛されてる・・・vvv」
「桃っ、顔緩みすぎ!!」
「ち、ちがうっ///!そのことじゃなくて!!!」
「照れない照れない〜」

別に写真もらえないと思ったから、そんな顔してるんじゃないのに!!!
・・・と言っても、この雰囲気。今からなにを言おうと信じてもらえなさそう。
ここは抵抗せずにもらった方がいいと悟った。

「ハイ、おチビ、プレゼント♪」
「どうもっす」
「ほら〜〜〜〜〜!!やっぱり欲しがってたんじゃん〜!」
「だ〜か〜らーー」
「越前っ!今度は二人で海行こうな〜〜vvv」
「ちょっと、暑いってばっ!!」
「コラー!!先輩無視していちゃいちゃすんなーー!!」

桃先輩はくっつくは、写真はつぶれそうになるわ、菊丸先輩は横で地団太踏んでるわ、
なんでこう、この人たちは大人しくしてらんないんだよ。
でもきっとこの人たちはずっと変わらないんだろうなって、そう思えたら
いつもうるさいと思っていたことも少し、笑って過ごせそうな気がした。
だから、こうやってうるさいのも悪くないのかもね、ってそんなこと思った。

「エージ!!!桃!!!越前!!!もう集合時間過ぎてるんだぞっ!!」

思い出の余韻に浸る暇もなく、大石先輩の大声が聞こえた。

「ヤベっ!桃のせいだかんなっ!」
「なんで!?エージ先輩も共犯っすよ!」
「おチビも早くっ」
「うぃっすっ」

あわただしく、バタバタとジャージとラケットを持ってコートに走り始める。
ほんと、こうゆうのって俺たちらしいよね。

「ん。越前なんかいいことあったか?」
「別に。」
「ププ。写真でしょ、おチビ♪」
「だーかーらー!」
「素直になれよっ越前vv」



こうして俺はまた、この人たちと思い出を作る。







お題初作品。
思い出を大切にするリョーマ君を書いてみたかった。
桃も大好きだけど、リョマは青学テニス部も大好きです。
  








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