「おまえってさぁ、酒強い?」
「さぁ。飲んだことないし」
「南次郎さん酒豪じゃん。絶対おまえも強いって」

なんだかいやに酒の話題を振ってくる桃先輩に、
なんかあったのと聞くと、階段を上る途中で見えた
キッチンテーブルの上に、ビール瓶が置いてあったらしい。
・・・親父め、また飲んだな。
普段から酒が入ってるような振る舞いをするくせに、
酒が入ると、さらに親父はパワーアップする。
だから俺の前では飲むなって言ってるのに、
これじゃ隠れて飲んでんのバレバレじゃん。

「ところでよぉ」

桃先輩がにんまりと笑う。
なんか、嫌な予感。








「こんなもん飲みたくもないんだけど」

案の定、桃先輩に促されて、キッチンへ。
ビール瓶を振って中身を確かめると、桃先輩はトクトクとグラスに ビールを注ぎはじめる。

「ちびっとだけでいいからさ。乾汁よかマシだろ」
「なんでそんな俺に飲ませたがるの?」
「酔った越前を見てみたい!」

それって、自信満々に言う言葉?
やっぱり却下、と言い放って、桃先輩を置いて部屋へ戻ろうと背を向けると、
ぐいっと腕をつかまれた。

「それじゃ、どっちが強いか勝負しようぜ」
「勝負・・・」

この言葉に俺は敏感だ。
勝つか負けるか。
桃先輩に負けるなんてまっぴらごめん。
テニスでも、テストでも、桃先輩との夜でも・・・。
人生は勝つか負けるか、
身長で負かされてる分、酒でなら勝てるかも。
少しの希望と不安を抱き、抵抗をやめる。

「いいっすよ」
「うっし。じゃ、まず1杯な」

グラスに注いだビールを、ふたり同時に一気に流し込む。
・・・・・・まずぃ。

「大丈夫か、越前」

苦いと顔を渋める俺に、桃先輩は平気な顔をしてる。
そんな中、俺は体の器官が熱くなっていくのを感じていた。
なんだ、これくらい全然平気。

「・・・越前?」

体全体がぽかぽかしてきた。
へへ、全然余裕。
これじゃ全然気持ちいくらい。

「・・どこ見てんだぁ、オマエ」

クスクス。
桃先輩こそ、なにその顔。
変なの。

あれ、ちょっと・・・
・・・あたまいたい。

「桃先輩」
「ん、平気か」
「少し、あたまいたい」
「は。まだ1杯だぞ」
「いたいの」
「・・わかった。とりあえず部屋戻るか」





部屋に戻って越前を見ると、顔はほんのり赤く、風呂あがりみたいに熱い。
目も潤んでるし、ここに来る時だって、少しヨタヨタ歩いてた。

「オ、オマエ、なんでそんなに弱いんだよ」

勝負勝負と気張ってた越前とは思えないほど、
今のコイツは、普段とはまったく別の越前だった。






 泣き上戸編


 甘え上戸編


















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