「青春だねぇ〜」
「・・っ!?な、南次郎さん」

いきなり俺の隣で聞こえた声に、俺はガタっと椅子をきしませた。

「なぁに見てんだぁ、モモシロ君よぉ?」

俺の視線の先にあるものを覗き込みながら、南次郎さんはニヤニヤと笑う。
夕食前の越前家のキッチンテーブルに座りながら俺が見ていたものは、
母親の料理を手伝うエプロン姿の越前だった。

「なぁ、リョーマ、ソソる?」
「・・・そりゃぁ、もう」

ぐっとテーブルの下で拳を握り締めながら、南次郎さんの問いに答える。
あどけない顔をした越前が、慣れない手つきで母親の料理を必死になって手伝っている。
越前のつけていたエプロンは反則だろとまで言いたくなる程に似合いすぎていた。
マジで・・・あれは可愛すぎだろ・・・。

いつもは奈々子さんがつけているエプロンらしいが、その奈々子さんが不在のため、
今日は越前が代わりにエプロン着用で、お手伝いに入ったわけだ。

「あーんなガキんちょのどこがいいんだかなぁ」

南次郎さんはひじを突きながら、
キッチンに並ぶ越前と倫子さんを見比べていた。

「・・南次郎さんは倫子さんだけ見てればいいんすよ」
「コラ。人の妻を名前で呼ぶんじゃねぇ」
「別に取ったりしないっすよ」
「ったりめぇだ、この野郎」

ゴスっと頭を小突かれ、南次郎さんも倫子さんにまだまだベタ惚れなんだと思うと、
なんだか羨ましいような、微笑ましい気持ちになった。
俺もいつかは、この二人みたいな夫婦になれるのだろうか。

南次郎さんともいつのまにか意気投合し、会話を弾ませていると、
出来立ての夕食を手にして、越前がテーブルへ近づいてきた。
ゴトっと皿をテーブルに置くと、

「随分仲良さそうっすね」

少し嫌味を含めたような口調で俺に告げた。
一言そういうと、越前はまた料理を取りに、母親の元へ戻っていった。
その小さな後姿をみながら思う。


・・・こいつ、まさか妬いてんのか・・・。

やべぇ・・マジ嫁にほしい・・・。


口では素直じゃない越前は、態度ではこれでもかって程に素直に表現する。
そこがまたたまらなく可愛い。本当にこいつには飽きない。
こうゆうたまに見せる素直な態度がどんどん俺を引き込んでいく。
ここまですることなすことに可愛いと思えるのは、素直にこいつだけだ。
自然に口元がほころんで、もしここに南次郎さんたちがいなかったら、
走っていって後ろから抱きしめているところだ。
あー・・畜生っ!!!好きだぜ越前・・・!!!!!


・・・ゴンッ!!


いってぇ・!
俺のとびっきりに甘い妄想は、鈍い低い音で一瞬にしてシャットアウトされた。

「晩飯前にサカってんじゃねぇ」

一言釘をぶっすりと刺された。
くっそぅ・・・
もしこれが二人きりだったら、このあとどんなに甘い時間を過ごすことになったか、と
今からうずうずが止まらないって言うのに。

「おまたせ!」

最後の料理が越前と倫子さんの手によって運ばれてきた。
笑顔の倫子さんの隣には、相変わらず思いっきり不機嫌な表情の越前がいた。
頼むからそんな可愛い顔しねぇでくれって・・・

「いただきます」

出来立てほかほかのおいしい夕飯を食べながら、
越前、このあと覚悟してろよと、俺は心の中でにやりと笑った。












桃リョは越前家で公認です。
越前家は桃城大好きです。










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