「悪ぃ、越前。しばらくキス禁止」 「・・・なんで」 じとっと見上げてくる視線が痛い。 仕方ねぇだろ・・・。 「乾燥してガサガサなんだよ」 そう言って唇を指差す。 寒さで乾燥した唇は、少し硬くて、 口をあけて笑おうもんならピシっと割れて痛い。 こんな状態でキスなんかできない。 だから、ちょっとの間我慢な、と苦笑すると、 越前が頬をぷぅっと膨らます。 「そんなん、舐めてりゃ治るよ」 俺の襟をつかみ、ぐぅっと越前伸び上がってきた。 俺はとっさに、越前の両肩を押し下げた。 「何する気だよ」 「だから舐めれば治るってば」 「普通の傷と一緒にすんな。余計荒れるだろ」 一瞬の隙も与えない俺に、越前は更に不機嫌になる。 そんな顔すんなって。 俺もキスしてぇっつーの。 越前は複雑な表情をした後に、自分の中の葛藤を乗り越えたようだった。 そしてため息をひとつついて。 「しょうがないから、ほっぺたで許してあげる」 しぶしぶと言い放って、俺の頬に唇を寄せてくる。 姿勢を低くし、それがいつ触れるのかと楽しみにしていると、 両手で顔をつかまれ正面を向かせられた。 ちゅ。 「・・・!」 ちいさな音を立てて、唇を奪われた後、 ぺろっと唇を舐められた。 「ほっぺで俺が満足するわけないでしょ」 イタズラっ子な笑顔を浮かべて、越前は俺に抱きついてきた。 ・・・このやろう。 怒るにも怒れない状態のまま、俺の口元もいつの間にか緩んでいた。 仕返しに、ぎゅうっと抱きしめてやると、 それに応えるように、越前もぎゅうっと抱きついてきた。 「その唇、早く治してよね」 ちゃんとキスしたい・・・// ぽそっと消えるようにそれを付け加えた。 「即行で治す」 俺も早くキスしたい。 越前の耳元で呟いてやる。 「うん」と小さな声が聞こえた。 ちゃんと治したら、越前にたっぷりとキスを贈ろう。 甘い甘い、二人だけの時間を・・・。 |