「越前、泊まってくか?」
「もちろん」

その言葉を言われると、自分でも驚くくらい笑顔になれる。
部活でヘトヘトで、いつもなら家に帰って即行で寝るくせに、
毎週この日だけは違う。

「おまえも好きだなぁ」
「・・・桃先輩、目が変態くさい」

桃先輩は目を輝かせる俺に、にやりと笑う。
・・・ったく、そうゆうことしか考えてないんだから。
まぁ、俺も嫌いじゃないからいいんだけど。
なにより、この日は誰にも邪魔されずに、桃先輩を独占できる。

土曜や日曜は、クラスの人やら菊丸先輩やらから
遊びの誘いがかかる。
桃先輩は、俺がいることに気を使って、いつも誘いを断ってる。
申し訳無さそうに毎回電話で謝る桃先輩を見ていて、
俺の良心が揺れ動く。

「いいよ。遊んできなよ」

そうやってたまに俺は、気を使って、桃先輩を送り出す。
このときにも桃先輩は、俺に申し訳無さそうな顔をする。
そんな顔をされるのは嫌だ。
だからといって、ずっと桃先輩を独占するわけにもいかなくて、
土日は、複雑な心境になる日がある。
でも金曜なら、そんなことを心配せずに、桃先輩といちゃいちゃできる。





「越前、大丈夫か」
「・・・アンタの前世、絶対イノシシ!」

心配そうに俺の顔を覗き込む桃先輩に、
仕返しの気持ちを込めて枕を投げつける。
なんだよ、こんな体にしたのアンタじゃん。

「ブふっ・・!コラ、なにすんだよ」
「うるさい、このケダモノ!」
「なにをう!?おまえだって夢中だったじゃねぇか!」

ケンカ口調なのに対して、桃先輩はいつも笑顔だ。
このやろ〜って俺をぎゅうぎゅう抱きしめる。
この狭いベットの中じゃ、逃げるにも逃げられない。

「もう、この馬鹿力・・・っ!」

俺も仕返しにぎゅうぎゅう抱きしめてやる。
でもそんなの、全然仕返しにも何にもならなくて、

「好きだぜ、越前」
「あっそ//」

その言葉に、そっけなく背を向ける俺に、
桃先輩は耳元に唇を寄せて、わざと低い声で囁く。

「なぁ、おまえは?」
「わかってるくせに」
「わかんねぇなぁ、俺馬鹿だし」
「じゃあ一生わかんなければ?」
「・・そうゆう可愛くないこと言うやつはオシオキだな」

なにする気、と聞こうと顔を桃先輩へ向けた途端に、
体重をかけられて、ベットへ押し倒される。
ぼふっと言う音と共に、桃先輩の唇が俺の唇へ押し当てられる。

「・・んっ・・ぅ」

いきなりのキスに、俺の鼓動は、
桃先輩にも聞こえるんじゃないかって思うくらい
激しく波を打ってる。
やわらかい唇が、舌が、どんどん俺を熱くさせる。

「も・・も、苦・・っ」

吐息まで桃先輩に奪われて、
俺はぷはっと桃先輩から顔を離した。
それでも、桃先輩は俺の上に乗っかってるから、逃げられなくて、
必死に顔を桃先輩からそらした。

「・・越前、可愛い。顔真っ赤」
「うるさい//」

触らなくてもわかる頬は、今すごく熱い。
濡れた瞳で見上げると、桃先輩はすごく幸せそうに笑った。
そんな顔されたら・・・
・・・俺だって、嬉しい・・・。

俺・・桃先輩のこと大好きなんだな。
桃先輩の笑った顔がこんなにも好き。
桃先輩にならなにされても、怖くない。

「桃先輩、好き」

笑顔にはなれなかったけど、
俺の胸は今、きゅうっと苦しいほど締め付けられてる。
そんなになるまで、俺は桃先輩のことが好きなんだ。
桃先輩は少し驚いた顔をして、また俺を力いっぱい抱きしめた。

「あ〜・・畜生!!愛してるぜ、越前!」
「うん//」

桃先輩の言葉に答えるように呟いて、俺も抱きしめ返した。

まだまだ時間はいっぱいある。
今日に明日に明後日も。
もし、明日誰かから誘いがかかっても、
きっと俺は桃先輩を離さない。
だって、離せないくらい今日は熱い夜になってしまったから。

ずっと一緒にいて、
そんな想いを込めて、俺は桃先輩の唇にちいさくキスをした。











前世だけでなく、桃城は現世でも十分イノシシです。(どーん)











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