「なぁ、おまえって夢ある?」 部活の帰り道、何気なく桃先輩に聞かれた。 「なに、いきなり」 「いいから、答えろって」 「桃先輩が言ったら言う」 「俺のが先かよ」 「当然でしょ」 「んー俺の夢はな・・・越前をお嫁さんに貰うことv」 変なブリッコをして笑顔を作る桃先輩。 そうやってすぐ話をかわす。 冗談なのかわからないその返答に、俺は顔をしかめる。 「俺、そうゆう冗談嫌い」 「冗談じゃねぇって〜」 やっぱり冗談にしか聞こえない・・・ でも、冗談と思わせておいて、本当は本心なのに、冗談に見せかけてるだけかもしれない。 桃先輩ならやりかねない。 でも本当に冗談かもしれない。 あぁーっもう。こんなの考えてもきりがない。 「なぁ、越前の夢は?」 「桃先輩がふざけてるから、言わない」 「もしかして、おまえの夢も桃先輩のお嫁さんになるっvだったりしてv」 上からにこっと笑顔で見下ろされているのが、なんだか不愉快だった。 「・・・・・・寝言は寝て言え」 「うっわ、冷た・・・!!」 普通そうゆうこと言うかぁ?19センチ上で笑い声がする。 俺には背伸びしても届かない高い空間。 俺の小さな夢は、その空間にたどり着くこと。 一度でいい。桃先輩と同じ景色を見てみたい。 「俺の夢は、桃先輩のつむじを見下ろすことっすよ」 「おーおー、かわいい夢だなぁ」 「馬鹿にしやがって・・・」 「せいぜい牛乳飲んで頑張れよ〜」 「心がこもってない。まるでヒトゴト・・・」 「だってヒトゴトだもんよ♪」 ぐりぐりと上から頭をぐちゃぐちゃにされて、ぽんぽんたたかれる。 ・・・すぐこれだ。 桃先輩の言葉にむっとして、スタスタ先に歩き出す。 「あー待てって越前〜」 「うっさい、来るな」 明らかに不機嫌な声で返答しながらも、 情けない声で追いかけてくる桃先輩の声に少し笑ってしまった。 俺を追いかけてくる桃先輩を想像しながら、 やっぱりこのままでもいいんじゃないかって思った。 背伸びして欲しがったもの=桃先輩の目線から見える景色みたいな。 桃先輩の頭を見下ろして、頭をぽんぽんたたき返してやるのが リョマの小さな夢(野望)です。 |