「やっぱり降っちまったなぁ…」



灰色の空を見上げながら 桃城は肩を落とす

靴をはきかえた越前が その後ろに並んだ



「傘持って来なかったんすか?」

「そりゃ持ってきたけど 気分悪いだろ、暗いし」

「テニスできないしね」



ため息も白く舞う もうだいぶ寒くなってきた

桃城は傘をしぶしぶ開くとゆっくり歩きだす

越前が 腕を引っ張って引きとめる



「俺もいるんだけど?」

「…なんだよ おまえ傘は」

「ない」

「天気予報くらい見てこいよなぁ」



しょーがねぇなぁ と傘の半分を貸してやり 肩が少しぬれる



「そんな時間が俺にあると思います?」

「開き直んなっての」



越前は 濡れる と文句を言いながら桃城にぴったりとくっつく

そんなにくっつかなくても濡れねぇよ なんて笑いながら言ったら怒るだろうか

越前の少し開いたかばんのなかから ソレが見えた


(ははーん)


からかってやりたくなって 俺が濡れるだろ と越前を押し返す



「押さないでよ 濡れるじゃん」


そしてぐっと越前が身体を寄せてきた瞬間

少し開いた越前のかばんから ソレをすばやく抜き取った

驚いて越前は すぐに必死に手を伸ばすが

この身長差では敵うわけもなく…



「持ってんじゃん カサ」


傘のひもを揺らしながら 口の端をあげて笑う

あんまり必死になって取り返そうとするから

わかったわかった と返してやる。



「別に…忘れてただけっすよ」

「開きかけなのにか?」



くくっ 結構ウソつくのへただよな



「アイアイガサ したかったんだろ?」



ギクっと心臓が波を打つ

…エスパーかよ



「忘れてただけだってば」

「まぁ そうゆうことにしてやってもいいけどよ」

「…………」



満足そうに桃先輩が笑う

見透かされてる

……ムカツク そしていつもみたいに頭をぐりぐりされる



「やめてってば」

「濡れんぞ こっち寄ってな」

「ん…」



肩を抱かれて 引き寄せられる

折りたたみ傘はかばんにちゃんとしまって

逆らわずに ぴったりくっつく







かさなんかひとつで十分













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□雨の日のバカップルカサがあっても使わない
 くっつきたいオトシゴロv



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