カシャンとフェンスに両手をかけ、いつもは自分が立っているコートを見つめる。
コートでは桃先輩が試合中。

じいぃぃい・・・。
もう少しで、桃先輩がセットをとるというのに、それに集中できないのはコレのせい。
間近で別の視線が、俺に突き刺さる。

「・・・コレが恋する瞳かぁ」
「は?」
「桃見てるときのおチビって、目が輝いてるんだよねぇ」
「なんのことっすか」
「『んもぉ、桃先輩カッコイイvvv』ってカンジィ?」
「人の話聞いてる?」

菊丸先輩がクスクス笑って俺の頭に手を乗せて、髪をぐしゃぐしゃにする。
俺はむっとして、眉間にしわを寄せ、口をへの字に曲げる。
そうゆうことしていいの、桃先輩だけなんだけど。
そうして、にやにやしてる菊丸先輩を見ている間に、周りにいたギャラリーから歓声が上がった。
どうやら桃先輩がダンクを決めてしまったようだ。

「ありゃ!いつのまに!!」
「ちょっと!菊丸先輩のせいっすよ!!!」
「ごめんにゃ〜vv」
「だめだよ、英二。恋路の邪魔しちゃ」

今度はこの人か・・。 俺にわざと聞こえるように、菊丸先輩の隣にいた不二先輩が答えた。

「えーでも不二〜。おチビは試合じゃないときでも桃見れるじゃん」
「それでも、好きな人の試合って見たいもんなの、英二だってそうでしょ」
「ま、ね。てかさ、桃見てるときのおチビって!スキスキビーム出してる〜ってカンジ♪」
「でも桃は気づいてないんだよね。かわいそ」
「おチビも立派に恋するオトメ〜vvねっ」

隣で勝手に盛り上がってる先輩。この人たちの会話にはついていけない。
俺、はさまれてなくて、よかった。
でも、俺の反対側の隣では、黙々と乾先輩が桃先輩のデータを取っていた。
カリカリ走らせるペンと、ぶつぶつ呟いてる声が聞こえる。
桃先輩のことをひっきりなしに、ノートに書き込んでいる。
なんか、むかつく・・・。

「おチビもさぁ、さっさと告っちゃえよぉ!」
「それより先に桃が告りそうだけど」
「未だに片想いとか信じられないよねっ!あんなラブラブしてんのにさぁ」
「キショいこと言わないでください・・・」

こっちはこっちで、うるさいし。
やっぱりどっちにしろ、ここの位置はイヤだ。
ただでさえ、フェンスを挟んでのコートは遠いっていうのに。

でもテニスをしてる桃先輩を見るのは好きだ。
間近ではないけれど、桃先輩をずっと見てることができる。
高く飛ぶ桃先輩も、汗を流す桃先輩も、好き。

「越前が恋をしている確立99%」
「・・・・・・今度はなんすか」
「乾ぃ、99じゃなくて100だよー!!」
「越前が認めれば100になるんだけどな」
「にゃるほど。だったらおチビ認めちゃいなよ!今、コ・コ・で!!」
「だからそんなのないってば」

あーもううるさい。
恋だの好きだの、そんな感情持ってるわけないでしょ。男同士なのに。
なにを勘違いしてるのか、この人たちはこの話題の時には大いに盛り上がる。


・・・そりゃ、桃先輩は人付き合いのニガテな俺にとって唯一気兼ねなく話せる人だし、
最近はうちでテニスしたり、宿題手伝ったり手伝ってもらったりしてるし、
手作りしてくれた料理はおいしかったり、俺にしか懐かないカルともなぜか仲良しだし、
毎日登下校は一緒で、公園寄ったりコンビニ寄ったり、桃先輩の家行ったり俺の家来たり、泊まったり。
電話の回数は結構多いし、桃先輩の家の人とも結構仲良く喋っ・・・―――





「おチビ、、まだ話すことあんの?」
「・・それだけノロケられれば、ほっといてもくっつく可能性100%・・だな、」
「へぇ、越前って桃のことになると、結構喋るんだね」

え・・・・・・・・・。
おれ、もしかして・・




声に出して言ってた・・・・・//////?!




もう聞き飽きたように頭をかりかりする菊丸先輩と、
いつもと変わらないけど、妙に楽しそうな不二先輩と、
なんのデータなのか、いいデータだ取れたと笑う乾先輩。
その視線に耐えられなくなって、

「おう、越前!俺の最後のダンク見てたか〜!すごか――・・っぐはっ・・!!」

歩いてきた桃先輩を突き飛ばして、俺はその場から走り去った。






桃城「え、越前・・俺が何したっていうんだ・・・」
菊丸「うわー、桃オツカレ〜・・」
桃城「エージ先輩・・んなこと言ってないで起こしてくださいよ」
乾 「・・不二、桃城は、幸せな男だと思う?不幸せな男だと思う?」
不二「タイミングの悪い男^^」













私もそう思います。


















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