突然入った1通のメール
“越前、暇だったらちょっと家まで来てくれ”





「もう、バカじゃないの」
「うっ・・・」

何かと思って行ってみれば、桃先輩はベットから火照った顔を覗かせていた。
ぺちっとおでこを叩いてやると、桃先輩が寝ているベットを軋ませながら座った。

「薄着してたら馬鹿だって風邪ひくんだからね」
「・・・容赦ねぇ発言だな」
「当たり前でしょ」
「ま、でも来てくれてサンキュな」

やっとのことで作った桃先輩の笑顔はいつもと違って、
やっぱりなんだか苦しそうだった。なんだかそれがちょっと切ない。

「桃先輩、暇だったら、って言ってたけど、」

俺が暇って言わなかったらどうしてたの?
ちょっと疑問に思って、真剣に桃先輩に尋ねてみると、

「あー・・そうきたら、自分で何とかするつもりだった」

今度はデコピンしてやろうと桃先輩の顔を覗き込んだはいいけど、、
冗談なんて言ってる場合じゃないほど、桃先輩の顔は真っ赤だった。
お説教は治ってからにしてあげよう。



「桃先輩、寒くない?」
「ん、もうちょっと厚手の毛布欲しい」
「わかった」

押入れの中からあったかそうなものを選ぶと、桃先輩にかけてあった布団をはがして
それをふわっと上に乗せる。

「あとは。なにか食べる?」
「食欲ねぇ」
「じゃあ、何か飲みもの持ってくるから」
「いらねぇ・・」
「だめ。飲まないと熱下がらないでしょ」
「・・・・・・。」

そんな顔したって駄目。
毛布を首の辺りまでかけ直すと、一階にある台所へ向かう。
冷蔵庫で大量にスポーツドリンクを発見してそれを持って部屋へ戻る。
もしかしたらと思って、部屋を見回すけど、桃先輩の両親が帰ってきてる様子はない。
もう、こうゆう時に限って風邪ひくんだから。
スタスタと階段を上り扉を開けると、
桃先輩がすっかり毛布をはいで大の字で寝ていた。

「もう、なにしてんの!」

急いでおぼんを置いて布団をかけてやる。
ちょっと目を離したらすぐこれなんだから。

「今度は暑いの?でもちゃんと掛けてなきゃ」

赤い顔で桃先輩が笑う。

「・・・なんか、越前やさしいのな」
「なにが」

眉をひそめると、桃先輩は今度は自分からちゃんと布団に潜り込んだ。

「なんか、愛を感じる」
「・・布団かけてもらうためにはいでたわけ?」

その笑顔はイエスってこと?
なに考えてんの、この馬鹿。

「病人なんだからそんなことしてる余裕ないでしょ」
「いやぁ、こんな時でもなきゃこんな愛感じられねぇしよ、なんか貴重じゃん」
「桃先輩が風邪引くほうが貴重だよ」
「なんだよ、俺だって風邪ひくんだぞ」


不意に、さっきのメールを思い出した。
“越前、暇だったらちょっと家まで来てくれ”

―――暇だったら

桃先輩は自分がこんな時にまで、俺に気を使う。
こんな時でも・・こんな時くらいは・・・。

「もうちょっと俺を頼ってもいいんじゃないの?」
「なんのことだ」
「暇だったらって、暇じゃなくても俺は桃先輩のところに行くよ?」

そんなこと言った俺に、汗だらけの額で、やっと伸ばした手で、桃先輩は俺の頬に触れる。
なんだよ、、慰めるみたいに撫でないでよ・・
これじゃ、どっちが看病されてるかわかんない。

「越前、アリガトな」
「別に・・桃先輩があんまり俺のこと信用してないから」
「してる。俺、越前のこと信用してるぜ?」
「うそ臭い」
「ほんとだって〜」

背中を向けて、スポーツドリンクをトクトクとコップに注ぐ。
それを無言で桃先輩につきつけると、起き上がった桃先輩は素直にそれを一口飲んだ。
そして、一息つくと、

「信用してなかったわけじゃないんだ。ただ・・弱ったとこあんまり見せたくなかったから」

そんなことを言って、
まだたっぷり入っているコップを俺に返した。

「桃先輩の弱いとこ見たくないなんて、俺がいつ言ったの」

俺だって、桃先輩だって強いところばっかりじゃない。
強い人間ほど、弱いところを隠したがるものだから、

「俺は、桃先輩の全部が知りたいよ・・」

強いアンタは好きだけど、
弱いアンタも嫌いじゃない。むしろ、ほっとする。
そんなところも、俺は好きだよ。
弱いところをなかなか見せてくれないアンタだから、
たまにはこうやって、弱いところも見せてよ。
そんな気の使われ方、ちっとも嬉しくなんかない。

「・・わかったよ。まどろっこしい言い方して悪かったな」

・・・わかればいいよ。
やさしい声で微笑まれたら、なんだか毒気を抜かれてしまって、
なんだかまともに顔を見れない。
・・病人のくせに・・。

「わかったなら、早くこれ飲んで」
「なんだよ、さっき飲んだろ」
「全部飲め」
「飲めって・・俺ァ病人だぞ〜もっと労われよ」
「なに言ってんの。笑ってる余裕あるくせに」
「そりゃ俺のポリシーだかんな!」
「はいはい、どうでもいいから、早く飲んで」
「越前が飲ませてくれたら飲む」
「なに甘えてんの」
「弱いところも見たいって言ったろ〜〜」
「意味合いが全然違う」
「固いヤツだなぁ、」

はぁ・・もう・・・。

「だからおまえ愛想が悪いって言わ・・」



ごくん・・・


「いきなりすんなよな・・」
「桃先輩もワガママだね」
「お前にだけは言われたくないな」

唇が、熱かった。
舌が熱かった。
・・熱上げちゃったかな。

「病人は用が済んだらさっさと寝る」
「ちぇー」
「・・・早く治ってよね」
「すぐよくなるって」
「治ってくれないと困るんだから」

まともにキスもできやしない。

「手、借りるぞ」

桃先輩から触れてきた熱い手は俺の手としっかりつながれていて、
ぎゅっと力を込めてきた手を握り返すと、桃先輩は嬉しそうに笑った。

「おやすみ、越前」
「おやすみ、桃先輩」

俺は、気持ちよさそうに目をつぶった桃先輩の頬に小さくキスをした。










蒼城さまリクの『風邪をひいた桃の看病をするリョーマ』でした
久々に書いたのであんまり甘くなくてすみません。
しかもリョ桃・でしょうか・・これは・・
いや、桃リョです。きっと桃リョです(汗)
でも書いてて楽しかったです。風邪ネタ大好きです!
こんなんでよければもらってやってくださいませ。












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