新年が明けて一番最初にやること。
あけましておめでとうのあいさつ、おせちとお雑煮を食べて、
お年玉もらって、雪かきして・・・。
その中でもひそかに楽しみにしてたこと。

「リョーマぁ、おまえはこっち頼む」

どっさりと渡された年賀状の山。
ほとんどは南次郎あてである親父の年賀状の中に、
目を凝らして自分あてのはがきを探した。

『越前リョーマ様』

あ。
堂々と書かれた自分の名前の書かれたハガキを裏返してみると、
イラストいっぱいに文字が少し書いてあった。

“おっチビ〜!今年も4649ね!!”
菊丸先輩か。

先輩らしいと少し笑って、俺ははじめてもらった年賀状に心を弾ませていた。
そして、他にどんな年賀状がきてるのかと、また目を凝らすと
次々に自分あてのハガキを目にした。

“今年も油断せずに行こう。青学は任せた”
ふで字・・・渋すぎっすよ、部長。

“あけましておめでとう、越前。健康管理には気をつけるんだぞ”
大石先輩らしいな。

“努力、努力、努力”
・・・・・・海堂先輩。

・・・・・・・・・。
乾先輩・・・年賀状にレシピ書かないで欲しいんだけど。

みんな個性豊かで面白いけど、はじめてもらう年賀状は、
どことなく、くすぐったいような、恥ずかしいような気持ちになる。
普段は仲いい人たちだけど、手紙なんて書いたこともないけど、
やっぱり自分あてに来る年賀状って、なんだかんだ言っても嬉しい。

そういえば桃先輩のはまだ見てない。
これだけ探してるのに、ないってこニは、
奈々子姉か親父のところに入ってるんだろうか。

「ねぇ、俺あての年賀そっちにいってない?」
「私のところにあるのは、ここにある分だけよ」

奈々子姉のところを見ると、河村先輩、堀尾・・
それに・・・あ・荒井先輩・・。
ヤベ。出してないし。
結構律儀なんだな、と思いながらその3枚を手に取り、
親父の分けてる分を覗こうとすると、

「きゃ〜リョーマ君のえっち〜」
「なにふざけてんの馬鹿親父」
「なぁなぁ、リョーマこれ欲しい?」

そう言って親父がひらひらを宙をまわせるはがきを見ると、
桃城 武、という文字が見えた。
桃先輩のじゃん・・・!!!
親父は桃先輩が絡むとすぐこうやって俺をからかう。
ほんとガキなんだから、イヤんなる。

「ちょっと、返してよ!」
「奈々子ちゃんーこれ見てみー」
「返してって!!」

親父は立ち上がって、奈々子姉にハガキを渡す。
くっそ・・もっと背があれば、取り返せるのに・・・。
結局ハガキは奈々子姉に渡ってしまって、俺にすぐ返してくれるのかと思ったら、
奈々子姉は

「相変わらずラブラブなのね」

そう俺に返して、微笑んだ。

「返してよ!!」

急に恥ずかしさがこみ上げてきて、無理矢理ハガキを取り返すと、その裏面を見た。
そこには、見慣れた下手な字で、お決まりの新年の挨拶と、今年の酉の絵が書かれていた。
・・けど、俺の目に最初に留まったのは、そんなありきたりな文章じゃない。

『今年も来年もずーっとよろしくな!大好きだぜ越前!!!!』

・・・・・・桃先輩の馬鹿ッッッ////!!!!!!!!!!

この場で大声を出すわけにもいかず、
下を向いて拳を握った。

「新年早々愛の告白されてやんのー」
「リョーマさんは桃城さんになんて年賀状書いたの?」
「相っ変わらず、アイツおまえにベタ惚れだなぁ」
「そういえばこの後桃城さんと初詣に行くのよね?」
「じゃそん時に何書いたのか聞いてみっかなぁ」
「リョーマさん、そんな恥ずかしがることないわよ」

奈々子姉は微笑みながら、親父はニヤニヤしながら俺を挟みうちにする。
次々と絶え間なく冷やかされて、俺はいても立ってもいられなくなって、
二人を押し切ると、勢いよく一気に階段をかけ上がった。
手に持っていた他のハガキも一緒に机の上に置くと、
その恥ずかしい桃先輩の年賀状を横目で見る。

・・・なにも年賀状に書くことないじゃん//
だって・・・・・・
賀正とか新年の挨拶よりも“大好き”の方が大きいし・・・///

この分じゃ、桃先輩が来るまで下には降りれないな、なんて思っていると、
見計らったかのように、携帯の着信音が聞こえてきた。
当然着信は桃先輩から。
俺はボタンを押すと同時に聞こえてきた桃先輩の声に怒鳴った。

「おう越前、あけおめv」
「あけおめじゃない!!!!なんなのアレ!!」
「お、その様子じゃ年賀状見たんだな」
「普通あーゆーこと書く//!?」
「なんだよ、気にいんなかったか?」
「親父たちに見られたんだから!!」
「いいじゃん、俺たちのこと知ってんだし」

新年早々、桃先輩ってホント疲れる・・・

「それに、ラブレターもらってみたいで嬉しいだろ?」
「あんなプライバシーのないラブレター嫌だ」
「そんなスネんなって。じゃあこれでどうだ。初詣の後なんかオゴってやる」
「・・・・・・・・・・・・わたあめ」
「おっけ!」

電話の向こうで、桃先輩が笑顔になってるのがわかる。
はぁ・・・、俺怒ってるのになぁ。
悔しいから、他にもなんか奢らせよ。

「それじゃ、そろそろおまえんち行くから」
「ういっす」
「それと、ちゃんとお願いごと考えとけよ!」

そう言って電話を切った。
・・・お願いごとねぇ。

別に神様なんかに叶えられる願いじゃないけど、
神様にも頼りたくなるくらい、俺って桃先輩に惚れてるんだよね。
やっぱりなんか悔しいかも。
でも、机の上の大好きの文字を見たら、少し許してやってもいい気分になった。

さっきので、今年のお願いは『背が伸びますように』にしようと思ってたのに、
1年に1回のお願い事も、まんまと桃先輩にとられちゃったな・・・。
その代わり、桃先輩には俺の願いごと、いっぱい叶えてもらわなきゃね。
クスっと笑うと、俺ははじめてもらったラブレターに小さくキスをした。


桃先輩、今年もずっとずっとよろしくね。










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 □このあと迎えに来た桃城に会いに、下に降りたリョーマは、
  すっかり忘れていた南次郎&奈々子から散々からかわれましたとさ。










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