「越前、明日遊ぼうぜ!」

「いいっすよ」



お互いの家、ゲーセン、テニス・・・

俺たちはまだまだほんの中学生。

原チャや車で遠出もできないし、お金も無い。

だから、いつもも遊ぶ場所は決まってしまう。

でも、たまにはどこか違う場所で、二人で、居たいときもある。

そんな素直な気持ちを言えることもなく、

少し不機嫌じみた声で言ってみる。



「またゲーセンすか」

「ん、嫌か?」

「別に・・・」



平気なフリをして桃先輩をちらっと横目で見る。

ん。なんか、考えてる顔。



「・・・よし!越前、明日9時おまえんち行くから起きて待ってろよ!」

「はぁ?9時?」

「いいとこ連れてってやっからよ」

「どこ行く気?」

「秘密v」

「あ、そ」













どこに行くかわからないけど、それが楽しみにもなって、朝はきちんと起きれた。

桃先輩は時間通り自転車で来て、俺もいつも通りに自転車に乗った。



「今日はちょっと時間かかるから、座ってろよ」

「・・・うん?」

「んじゃ、出発な」



学校と反対の道に、自転車を走らせる。

桃先輩と自転車に乗るなんてことは毎日のはずなのに、目の前の背中は変わらないのに、

それがすごく新鮮に感じた。

そして30分後。



「ね・・・まだ着かないの?」

「時間かかるって言ったろ」

「あとどれくらい?」

「んー30分かな。いや、1時間かな。」

「そんなにっ!?」

「いいだろーおまえ座ってるだけなんだから」



確かにそんなかかるんじゃ立ってらんない。

大人しく座ったまま、桃先輩の腰に腕を回す。

体の支えをすべて桃先輩に任せるように・・・



「ぉ・・・どした、越前」

「いいから。前見てよ。安全運転」

「へいへい・・・」



心地いい振動と、暖かい春風と、桃先輩の背中。

目をつぶればこのまま寝てしまいそうな、そんな日。



30分か1時間か、目を開けると視界に入るもの、

海、海、海・・・

全く予想していなかったさざなみの音。

満面の笑み。



「どうだ、目覚めたか?」

「・・・覚めた」



・・・海って、こんなきれいだったっけ。

きらきら光る太陽が反射して、桜の花びらが舞う。

春のうみ。



海の隣にある高い崖の上には、敷き詰めたといっていいほど、

桜の木が並んでいた。

やわらかい風が吹くたびに、薄色の桜の花びらが舞い、海に降りる。

桜を見たらいいのか、海を見たらいいのか、

それは動く絵のようだった。



「越前、ちょっと見とれてるだろ」

「・・・ちょっと、だけ」

「綺麗だろ。俺の秘密の場所」

「ね、近くまで行っていい?」

「おう、行こうぜ!」



肌色の砂を踏んで、波打ち際まで寄る。

しゃがみ込んで、水に触る。

まだ冷たかった。



「夏になれば、人もいっぱい来るんだけどな」



俺は、人がいない方がいい。

派手な水着に目移りして海は綺麗に見えないし、

波音のかわりに人の声がざわめく。

海ってそんなイメージだったから。

入れなくてもいいから、春の海の方がいい。

桃先輩と、二人の海がいい。







「ん。風出てきたな」

「っ・・・目に入った」

「あ、こするなよ!」

こすろうと手を目に当てようとすると、手をつかまれてとめられた。

頬を両手で包まれて、



「そのまま瞬きしてみ」

「痛い。無理・・・」

「そんなんじゃ、目治んねぇぞ?」



このままじゃ離してくれそうもないから、我慢して少しだけ瞬き。

少しだけ目が潤んで、痛みは消えた。



「治ったか?」

「ん、たぶん」



大丈夫、と言って見上げる。

・・・・・・・・・

・・・・。



「なに・・・?」

「なにって、普っ通ここでキスだろ!」

「なんで?」

「なんで、って・・・はぁぁ」



そんな深くため息つかれてもね。

あんまりがっかりするもんだから、少し笑った。

ま、でも・・・

今日、来てよかったし









ちゅ。









「しょうがないから、してあげたっすよ」



クスクス笑ってると、やんわり抱き寄せられた。



「このやろ。可愛いことしやがって」



今度は桃先輩からキス。

そしてまた二人でクスクス笑う。



「ね、桃先輩。思ってみれば電車でも来れたんじゃない?」





ポツリと言った言葉に、桃先輩の動きが止まる。

自転車なんかよりも、電車できた方がはるかに楽だし、早く着く。

この反応からして、自転車で行くことしか、桃先輩は頭になかったんだろうけど。

でも俺は自転車の方がいい。

空気もいいし、バカみたいに笑って、ときどきケンカをしながら。

そのほうが俺たちらしいでしょ。



「桃先輩。またここ来ようよ」

「そうだな。近いうちにまた、な。」



その時もまた自転車で。

桜も散って、今度は新緑の頃になったら。

そしたらまた、二人で海を見よう。













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 □おまたせしました!
  かおりさんリクの「海でデート」でした!
  ひぃぃ。ほんと遅くなってしまってすみません!
  この通り、思いつくまま一日で書き上げてしまいましたが、
  受け取ってくださいませ!
  たぶん、リョマは人ごみが嫌いなので夏の海は嫌いだと思うのです。
  それなので、春の海です!冬でも結構おいしいシチュエーションかとvv
  たまには、そんな桃リョもいかがでしょう。

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