朝、学校へ行くときも 帰るときも 桃先輩と俺は一緒にいる。

そのことに不満はない。でも邪魔者な存在なヤツがいる。

……この自転車。



「ねぇ…たまには歩いて帰ったりしたくない?」

「ん?なんでだよ」

「別に……」

「ふーん?…それにしてもよ、部長も20周も追加することねぇよなぁ〜」

「自業自得っすよ、いつまでたっても食べてんだから」

「しょーがねぇだろ!昼、時間なくて食えなかったんだから」

「食べもしないで喋ってばっかりいるから、そうゆうことになるんすよ」

「へいへい。ほら、着いたぞ」



自転車が止まる。

ゆっくり降りる。



自転車を使うと早く帰れる。

そんなの当たり前。そのために自転車使ってるんだから。

わかってる、わかってるけど……



「じゃあな!また明日」



そう言って、すぐに自転車こぎ出して、すぐに俺の前から消える。


まだ、話したいことあったのに…な。



ときどき歩きで帰っても、いつもより広がって歩くから

車にクラクションは鳴らされるし、邪魔な自転車があいだに割り込む。

桃先輩と隣同士で歩くのは、ジャージを着ている間だけだった。


















「越前、今日…帰りは歩きだわ…」

「なんで」



いつものとおり 自転車置き場に寄ったら桃先輩が立ち止まった。

あれ…

見回しても、見慣れた自転車が見つからない。

確か朝 自転車を止めたのはここだけど

そこだけスペースが開いていて、近くを見回してもそれらしいものもなかった。



「やられた……」

「桃先輩…鍵は?」

「かけ忘れた、かも」



肩をがっくり落としながら、ため息をつく。



「遅刻しそうだったから 急いでて忘れたみてぇだな…」

「遅刻しそうなのは 今日だけじゃないっすけどね」

「おまえのせいだろーが」

…すんません

「しょうがねぇな。歩いて帰るぞ!」

「っす。」



桃先輩は落ち込み気味だけど、俺は内心 少し嬉しかったりして。

言わないけど。

もう、6時過ぎ。歩きで帰ると こんなにも時間はゆっくり流れていく。

オレンジ色だった空はいつの間にか真っ暗で パラパラと星がいくつか散らばった。

いつも風のように通り過ぎる町並みを見ながら くっつくようにして歩いた。



「な、越前♪」



笑い混じりに呼ぶ声と、笑顔で差し出された手。

自分の手より一回り大きな手。

呆れ顔で 心の内を隠しながら 素直に自分の手を差し出して、指を絡めた。

些細なこと。

でも いつもはない空間。

桃先輩の声が すぐ近くに聞こえる。

桃先輩の体温が手から染み込む。



「疲れたから、少しゆっくり歩いて」


疲れたなんて、嘘だけど。


「おう いいぜ」


ゆっくりだった足取りを さらに遅くして歩いた。



「なぁ、越前」

「なんすか」

「…俺 おまえが歩きにしたい理由、わかっちまったかも」

「今頃、遅いっスよ」



嬉しそう笑う桃先輩につられて俺も笑う。

ここで一旦立ち止まる。

信号待ち。



…青になんなきゃいいのに……な

ずっと赤でいいよ…


もっと もっと 家が遠くにあればいい

追いかければ逃げていく月みたいに 俺の家も逃げていけばいい


自転車なんか もういらない

朝だって がんばるから

だるいなんて 文句も言わないから






だから一緒に 歩いて帰ろ?











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 □ゴメンナサイ(>_<)遅くなりました。
  眞ちんの年賀イラストのお返しSSです。
  ほんと、ごめんなさい。もう2月じゃんね、みたいな。(死)
  今年もこんなバカをよろしくおねがい致します。賀正!!(遅)









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