「越前、ちと手貸してみ」
「なんかくれるんすか?」

少し期待した瞳で俺の顔を見上げる越前を小突く。
「ばぁか」
越前が違うのかと、口を尖らしている間に、
俺はその手をとって俺より一周りも二周りも小さい手のひらを眺めた。

「なにしてんの」
「手相みてんの。クラスの連中が生命線とか感情線とか騒いでたからよ、越前のも気になったわけ」
「ふーん。で、どうなんすか、俺の手相」
「・・・意外と感情線長いのな」
「へぇ。それってどうゆう意味?」
「喜怒哀楽が激しいってこと。そんで、これが頭脳線」
「桃先輩には無さそうな線だね」
「ほっとけ。で、こっちが・・・」

手のひらの脇に刻まれた線を指差し、ニヤリと笑った。

「結婚線♪」
「なに、その笑顔」
「これって俺のことだなぁと思ってv」
「桃先輩って、妄想壁があるんスね」
「夢と言えよ!でな、これが生命・・・」
「なに」
「短けぇ・・・おまえの生命線。アレだな、美人薄命ってやつ!」
「ふーん。そうゆう桃先輩は?」
「ん、俺?俺は100まで生きるぜ!!」

そう言って、越前の前に手のひらを堂々と差し出した。
そこに刻まれた生命線は、深く手首の辺りまでくっきりと示されていた。

「なっ?」
「見たまんまというか、期待を裏切らないというか。」
「来世まで生きる自信有り!」
「ゴキブリ並」
「あのなぁ、少しは羨ましがるとかしろよ」
「別に。長く生きたからって幸せだなんて決まってないし」
「そりゃ、そうだけどよ。長く生きた分、幸せになれる可能性だったあるだろ?」
「・・・じゃあいいよ。俺が死んだあとものうのうと生きてれば!?」
長く生きたからってなんだよ。
「なんだよ、自分のが短かったからってイジけてんのか?」
からかうように、俺の頭をなでながら笑う桃先輩。
「そんな深く考えることねぇって。たかが手相占いだぞ?」
「最初に振ったのは桃先輩でしょ!」
「気にしてんのか?」
「・・・別に」
「どっちだよ」
「100まで生きて、桃先輩はなにをするの」
「越前・・・」
「俺がいなくなった後、桃先輩はなにして過ごすの」

しまった・・・完全に不機嫌モード。
頭をなでようとしても振り払われるし、こうなった越前の機嫌はなかなか治せたもんじゃない。
結構遊べると思ったのにな、手相占い。
でもこうやって逆目に出ちゃ意味ねぇよな。

あ。そうだ。

「越前、そろそろ帰ろうぜ」
「話をすりかえるな」
「いいからいいから」
「よくない」

そうやって、越前の腕を引っ張りカバンを持って校舎を出る。

「手相って変わるんだぞ。」
「嘘ばっかり」
「マジだって。生活の仕方でどうにでも手相なんて変わるんだぜ?」
「あーそう。じゃあどうゆう生活すればいんすか!」
「だから、こうしてサ」

延びていた越前の手を取って、ぎゅっと握り締める。

「俺の生命線、分けてやるよ」
「・・・こんなんで、変わるわけないじゃん」
「そんなもんやってみないとわからねぇだろ」
「気休めだね」
「おう、気休めだ」
「でも、上手くいったら桃先輩の生命線、全部俺が吸い取っちゃうかもね」
「じゃあ全部吸い取るほど、毎日手つないで帰んなきゃな」
「それはヤダ」
「あ、やっぱり?」

でも俺たちはわかってる。
手相なんて関係ない。
好きなやつと好きなだけ一緒に居れれば、今はそれでいい。
手相なんかで、自分の人生に縛られるほど、俺たちは素直に生きてない。
それでも毎日、なんだかんだで楽しく過ごしてるんだから
今は今で、それはそれでいい。

「越前、明日も手つないで帰ろうぜ」
「気が向いたらね」
「ちぇ。つれねーやつ」

でも今は、手をつないでかえる口実のために、手相なんてものを大いに活用していたりするのだ。








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 □桃城よ、自転車はどうした?とツッコミながら書きました。
  大分久しぶりのSSでした。
  また文の書き方を忘れたので、こんな変文ができましたとさ。











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