夜中に目が覚めた。

時計を見てため息。時計はまだ2時・・・

天井を見つめながら声を姿を思い描く。



「越前、なにしてっかな。って寝てるか」



睡眠大好きだからな。

寝顔もいいけどやっぱり生意気に笑ってるほうがあいつらしい。

ま、可愛いことに変わりねぇけどな。

その表情を思い浮かべると 思わず笑いがこみ上げる。

あー・・・ほんと、俺って越前好きだよなぁ・・・

思わず、実感してしまう。

時計の針は2時15分。

・・・過ぎるの遅いっつーの・・・

こうゆう静寂に満ちた 真っ暗な夜は好きじゃない。

空が明るくなるのを待ちながら、狭い部屋の中で俺は再び目をつぶった。















「越前ー行くぞー」



眠い目をこすりながら越前が出てくる。

いつもと変わらない光景。

嫌がるんだろうなと想像がついても昨日の思いがこみ上げてきて

思わず越前を抱きしめた。



「うわっ。ちょ、いきなりなにすんの!」

「好きだぜー越前!」

「は・・・?」

「んーまぁ、ちょっとな。おかげで目も覚めただろ」



本当のことを言ったらきっと笑われると思って、わざと言葉を濁し。

いつもなら抱きしめた後、照れながら突き返されるが、

今日はなんだか違った。



「早く乗ってよ。遅刻する・・・」



ん・・・なんか、不機嫌?

っつーか、怒ってる・・?

さっさと自転車に乗って学校へと急かされた。











「じゃあ越前、また後でな」

「っす・・・」



自転車を降りて 一言だけ返事をして一人歩き出す。

今度はなんか悲しそう?

下向きの背中を見ながら、俺も教室へと向かう。

どうしたんだよ越前。











部活になってもその様子は変わらなかった。

近くに居るもののその微妙な越前との距離が目立ったのか

腕を引っ張られ、越前から少し離れた場所で耳元で告げられた。



「桃ぉ〜今度はなにしたんだよ〜」

「さぁ・・・」

「さぁ、って」



越前がなんで怒ってたのか。俺なんかしたか?

身に覚えがない。いや・・・少しあるか・・・

そりゃあ今日はいきなり朝っぱらから抱きしめたりはした。

いつもはそのくらいで機嫌損ねるヤツじゃないし・・・

でも、それからなんだよな。機嫌悪くなったの。

越前の気持ちがわからないのが悔しい・・・



「おチビに直接聞いちゃえばいいじゃん」

「そりゃそうなんすけど」

「がちゃがちゃ考えてないで行ってこい!」



背中を押されて 越前の目の前まで出る。

むっとした顔で俺を見上げる。

やっぱり怒ってる。



「あー・・と、、越前」

「なに」

「おまえさ、なんか怒ってる?」

「見ててわかんないの?」

「いや、わかるけど」



上目遣いで睨まれて、さらに不機嫌になる。

これじゃ火に油状態。でもこれを放って置くわけにはいかない。



「回りくどい言い方しないでよ。俺のこと嫌いなら嫌いって言えばいいじゃん!!」

「は?おまえなに言っ・・・」

「桃先輩なんか大っ嫌い!!!」

「お、おい越前。ちょっと待った」



何を勘違いしてるのか、暴れる越前をどうにか引き止めた。

越前の嫌がることはしないと決めていたけど、こればかりはしょうがなかった。

俺が越前にいつ嫌いなんて言った?



「や!離してよっ!」

「話を聞けって。俺がいつおまえのこと嫌いなんつったよ」

「今日の朝一番。」

「俺は好きとしか言ってねぇよ!」

「今日が何の日かわかっててあんなこと言ったんでしょ・・・」







は?

今日がなんの日かって・・って?

今日・・・?

今日は・・・29、30、31、1・・。1日。

4月1日。



・・・・・・あーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!





シガツバカ。







「もういいよ。」

「越前っ!誤解だ誤解っ」

「・・・・・・誤解?」

「まさか、今日だと思わなかった・・・」







数日前、俺は越前と賭けをしていた。



『越前、4月1日はエイプリルフールって言ってな、嘘ついてもいい日なんだぜ!』

『知ってるよ、それくらい』

『じゃあ勝負しようぜ!嘘ついて騙された方が負けってことで♪』

『ふーん。別にいいけど。てか俺に嘘で勝てると思ってんの?』

『・・・それって自慢になんのか?』

『桃先輩騙すの簡単そうだし』

『コノヤロウ・・・』



数日前にした約束。その当日がまさか今日だなんて・・・

すっかりさっぱり忘れていた。



「忘れ、て、た・・・?」

「ごめんっ!ほんと、悪かった!!」

「・・・桃先輩。どう落とし前つけてくれるんすか・・・」

「わ、悪かった越前。ほんと、ごめんっ」

思いっきり殴られると思って覚悟を決めたら、

越前の膝が折れ曲がってその場にしゃがみ込んだ。



「・・・嫌われたかと思った」



小さく消えそうな涙声でポツリと言った。

壊れそうな小さな体を包むように、やさしく抱きしめた。



「ほんとに、ごめんな。越前・・・」



今度は少し力を込めた。

エイプリルフールだから、好きだと言ったことを反対にとってしまった素直な越前。

約束を忘れてた俺。

どう踏んでも俺が悪いよな。



「ごめんな。あんなこと言わなけりゃよかったな」

「・・・そうだよ。俺が今日一日、どんな気持ちだったと思ってんの」

「ほんと、マジで悪かったよ・・・」

「ビックマックセット。」

「へ?」

「それで許してあげても、いいけど・・・?」

「・・・おごらせてください。」





















越前の機嫌もようやく治ったあとに気づいたことだけど、

今回の賭けは俺の勝ちのはずなんだよな。

『嘘ついて騙されたほうが負け』

俺はウソをついたつもりはないが、越前は完全に騙されていた。

勝ちは俺のはずなのに最終的には・・・

『ビックマック。』





なんか・・・これって、越前の勝ちっぽいよな・・・。

はぁ。やっぱ越前には勝てねーわ・・



そんな風に笑い話になったのはもう少し先の話・・・













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 □ぎゃふん。桃がヘタレだ・・・。
  かっこいい桃城さんが書きたいよぉ。。。
  でもヘタレも好きだ。
  久しい桃城視点。やっぱり桃城さんは難・・・

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