桃先輩が乾先輩に負けた。

下を向いて 何にも言わないで 一人で帰っていった。

俺も一人で帰った。

桃先輩と帰るのが当たり前だったから

ひとりで帰るのは久しぶりで 家に着くのがいやに長かった。

奈々子姉が不思議そうに出迎える。


「リョーマさん、今日は早かったのね」


どこにも寄らなかったから。

マックも 公園も 寺のコートも ひとりじゃ意味がないから…


「どうしたの?なんか元気がないみたい」


そんなに顔に出てるのかな

得意のポーカーフェイスも役に立たない。


「リョーマさん ご飯は?」


いらない

聞こえたかわからないけど そうつぶやいてゆっくり階段をあがる。

電気をつけない夕日色の部屋はどこか切ない雰囲気で…



少しつかれた



次第に夕闇に包まれていく部屋の中で 静かに目を瞑った。























朝、桃先輩は迎えに来なかった。

ずっと待ってたけど 来なかった。

冷たいマフラーを巻いて ゆっくり歩いた。

おかげで遅刻した。


「結局 桃ちゃん先輩 来なかったね」

「昨日あれだけ落ち込んでたもん…」


放課後 加藤と水野が桃先輩の話をしていた。

疲れて寝てるフリをしながら それに耳をかたむける。


「学校には来てるみたいだけど」

「…今日の部活 気味悪いくらい静かだったね…」

「うん…」


みんなそう思ってる。

大石先輩と菊丸先輩がケンカして

海堂先輩がいつも以上に苛立ってて

調子を取り戻そうと 大石先輩がいつも以上に声を上げる。

だって こんなことは初めてで…

風邪なんか引く人じゃないし サボって休んだこともなかった。


「越前、ウォーミングアップの相手がいないなら 俺が相手になろうか?」

「おっちび〜俺とダブルス組もっ!」


柔軟も乱打も いつもと違う相手。

休憩時間もときどき菊丸先輩が話しかけてくるだけで

部長にうるさいと怒られて グラウンドを追加されることもない。

だってうるさい原因の桃先輩がいない。





そして 今日も一人で帰る……





さみしい気持ちと同時に 初めて気づいた存在 空間。





『ちくしょ〜もう少しだったのによ〜!!』

『へへっ!今回は俺の勝ちだぜ!』

『きったねぇぞ 越前!』

『ははっ 明日オゴってやるからスネんなって!』





笑い声が 聞こえない





それはまるで空気のように...

あたりまえのように 俺達を包んでいた存在。





それはまるで空気のように...

なくなって初めて気づく存在。





それはまるで空気のように...

近すぎて気づけない 大事な気持ち。


もう十分 痛感したから







おねがい











はやく かえってきて。

















 -----------------------------------------------------
 □うわ、暗(驚
  桃が出てこない桃リョ。
  リョマが桃の大切さに気づく所を書きたかったんです。
  桃愛されてるなぁ。
  暗いまんまいやなので「帰ってきた桃」も予定中



back














100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!