『ちょっと遠いけど、いいものを置いてるスポーツ用品店あんだよ。
 越前、一緒に行かねぇか?』




桃先輩にそう言われたから、待ち合わせ場所の駅にいるのに・・・
桃先輩はまだ来ない。
珍しく早起きして、しかも、歩いて来たのに・・・






Lost Child






「お―い、越前〜〜!!」

桃先輩から言ってきた約束の時間から30分。
ようやく来た。
俺の名を呼びながら手を振って。
『大声で呼ばれるの恥ずかしいから止めてよね』
って何度も言ってるのに、全く直らない。
それどころか、わざとやってるとしか思えない。

「遅いっスよ!!30分も待ったんですケド」

走ってきたのか俺の前で、ふぅ〜っと息を整えている。

「悪い・・・俺のチャリ、パンクしてんのすっかり忘れててさ。
 今、修理に出してきたんだよ」
「へぇ〜言い訳すんの?俺を待たせて言い訳するんだ。いい度胸じゃん」
「悪かったって!!許してくれよ〜〜〜」
「許して欲しいの?じゃあ、ファンタ買って」
「・・・そんなので許してくれるのか?」
「今日から1週間分ね」
「――っ!!・・・わかったよ」




桃先輩を振り回すのがもう日課になっている。
桃先輩も文句を言わない。
だから、面白くてつい・・・

「そろそろ行くか?」
「うん」

俺と桃先輩は、切符を買って電車に乗り込んだ。






「おい、越前」
「ん・・・何?」

気合を入れて早起きをしたせいか、電車が出発してからすぐに眠気が襲ってきた。
眠い目を擦っていると、桃先輩が俺の顔を覗きこんできた。

「今から行くトコ、駅5つで結構時間かかるから寝てていいぞ。
 起こしてやるから」
「そう?じゃ、少し寝ようかな・・・」

・・・そういえば、休みの日に桃先輩と2人っきりで電車に乗って
どこかに行くの初めてだ。
これって、デートって言うのかな・・・

そんなことを考えながら、夢の世界へ落ちていった。






しばらく経ってから、右肩に重みを感じて目が覚めた。

―――///!!

桃先輩の顔が、俺のすぐ横にあって心臓が飛び出るかと思った。
でも・・・
『起こす』って言ったくせに、寝てんのっ!?

「ちょっと、桃先輩!!」
「んあ?」
「重いんだけど」
「あ?あぁ、悪い・・・ん!?」
「どうかした?」




『次は○○駅〜○○駅です。お降りのお客様は・・・・・・』




「やべぇ!!降りるぞ、越前っ!!」
「え?!」
「俺たち、1つ先に来たんだよ!!」






すぐに俺たちは電車を降りた。
でも、まだ問題が残ってた。

「ごめん、越前!俺、金あまり持ってねぇから、戻る電車に乗れねぇんだよ・・・」
「はぁ?!」
「だから、歩いって行かねぇ?」
「・・・・・・」

もう、呆れて声も出ない。

「疲れるの嫌なんスけど」
「じゃ、カバン持ってやるからさぁ〜〜」
「はぁ・・・」




・・・とまぁ、こんな感じで1時間近く歩いて1つ前の駅まで戻ってきた。
もちろん、歩いて。




「・・・それで、桃先輩。ここからその店は近いんスか?」
「あぁ。この地図によるとだな・・・あれ?」
「地図って・・・行ったことあるんじゃないの?」
「月刊プロテニスに載っててさ、行きたくなったんだよ。
 この駅には何回か来てるから、地図見りゃわかると思ってたんだけどなぁ・・・
 ダメだな、こりゃ。ハハ」
「〜〜〜〜〜っ!!」

『ハハ』って笑ってる場合!?
俺を散々歩き回らせといて、行ったことない?!

「ま、この辺の人に聞いてみりゃわかるって!すいませ〜ん!!」

桃先輩は走って、道を聞きに行った。

「ちぇっ・・・これのどこがデートだよ・・・」






結局、あの後5人くらいに道を聞いて、ようやく店に着いた頃には
もう夕方になっていた。




あれだけ振り回されて、すごくイライラしていたハズなのに
そのことを忘れてしまうくらい品揃えのいい店だった。
桃先輩も、欲しかったものを買えたみたいで
店を出て駅まで歩いて戻る途中、俺にファンタを買って何度も謝ってくれた。




「なぁ、越前・・・本当にもう怒ってねぇのか?」
「しつこいよ」
「越前〜〜〜〜」

電車に乗ってもまだ謝ってくる。
ホント、桃先輩って子どもみたいなんだから・・・




「ねぇ、桃先輩?今度2人で出かける時は、疲れないで済むトコにしてよね」
「?越ぜ・・・・・・///」

桃先輩はいきなりのことに驚いて、まだボーっとしている。
桃先輩の頬にキス・・・///
俺からするのは滅多にない。
それに、電車の中だからすごい恥ずかしいけど。
・・・まぁ、こういうのもたまにはね。






「・・・ゃくさん・・・お客さん!!」
「ん・・・?」




大きな声で話しかけられて、夢の中から引きずりだされた。
また寝ていたみたいだね・・・

目の前には駅員さん。




「どうかしたんスか?」
「終点ですよ。お連れさん起こして降りてもらえますか?」
「えっ!?」

隣には気持ちよさそうにスヤスヤ眠る桃先輩。

「〜〜〜〜〜〜っ!!」






この後、俺と桃先輩はまたケンカになったのは・・・
まぁ、わかるよね?


 










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 □蒼城さまより『迷子な桃リョ』をいただきました〜!!
  1400hitをフミフミしていただいちゃいました。
  デートを意識しちゃうリョマが可愛いです〜〜。
  デートにハプニングはつき物ですよね。
  きっとはじめての電車デートでリョマさんもドキドキしてたんでしょうねvv
  初々しい桃リョをありがとうございました!!











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