ぴゅううう〜 玄関を開けたと同時に空っ風が舞ってきた。 リョーマは、回れ右したい気持ちが沸々と湧き上がって来る。 年末に降った雪がまだ、道路や屋根の上に残っていて、より一層寒く感じた。 「越前?」 「寒ッ!」 「大丈夫かぁ」 桃城は苦笑いをしてワシャワシャとリョーマの頭を撫でた。 1月2日の今日は、桃城家恒例のお参り日だ。 夫婦でお参りをし、その後にお互いの実家に顔を出し、新年のご挨拶をする。 「今年は、大人しく家にいるか?」 「・・・・ヤダ」 「参拝の後のいちご飴が目当てだろう?」 「ち、違うもん!」 ま、行こうかとリョーマと手を繋いで、桃城は神社へ向った。 某有名神宮へ行くとすごい人だった。 参堂する御社殿まで、100メートル以上先まで人が溢れている。 鳥居が先の先に、小さく見えた。 「「・・・・!」」 桃城とリョーマは顔を見回せて、溜息を付く。 毎年のことながら、すごい人だ。 参拝するまで1時間以上は掛かるだろう。 「相変わらず、すげー人だな・・・」 「っスね」 これも日本の年始の風物詩だと思えば、仕方ないかと諦めの境地に入った。 並ぶ一番最後の波に二人も加わる。 けれど桃城はともかく、リョーマは背が低く、しかも人ごみが苦手だ。 「越前―?大丈夫か?埋れてるぞ」 「うっさいっスよ!」 リョーマはぷうぷう膨れて、人ごみに飲まれないように精一杯背を伸ばした。 クククッと笑い桃城は「あのちっちゃい子みたいに肩車するかぁ」とからかって来る。 リョーマも「ふん」と強がってみたものの、だんだん息苦しくなって、フラリとよろけそうになり。 「平気か?寄り掛かってろよ」 桃城がリョーマの体勢を整え、心配そうな目で覗き込んだ。 リョーマのお気に入りの『クリーミーのど飴 ブルーベリー味』をポケットから出し、ポイっと口に入れる。 「・・・!甘」 「飴でも嘗めたら少しは、気分も変わるだろ?」 「ん。ありがと」 「寄り掛かって良いからな」 リョーマの背後に桃城が付き、後ろから抱締めてくる。 「早くお参りできるといいな」と桃城は耳元で囁いた。 「そうだ。こんなのどうだ?」 桃城が気を紛わせるように耳元で、歌を歌い始めた。 リョーマは桃城の腕の中に入り、桃城の歌声に包まれていた。 1時間後。 漸く御社殿まで来た。 桃城のお陰で、時が経つのも忘れていた。 チャリン・チャリン 桃城は力一杯、遠くまでお賽銭を放り。 リョーマは、ポイと投げた。 お賽銭を放り、桃城とリョーマはお祈りをした。 『『今年も、仲良く過ごせますように』』 二人とも同じ願いを掛ける。 「おっし!」 桃城が威勢良く声を出した。 お参りも漸く済み、人ごみから抜け出せる。 「ずっと並んでたから、暖かいもんでも食うか?」 「えー。いちご飴が食べたい」 「おでんが先だ!」 「いちご〜!」 二人は仲良く言い争いをしながら、自分のお目当ての出店を探すのだった。 --------------------------------------------------------- □HAPPYさまからいただきました、お年賀メールの素敵SSでしたー! 新年早々仲良しの桃リョに癒されましたv い、い、い、いちご飴って・・可愛っっ!!! 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 |