バレンタインが土曜日だなんて、カミサマはいじわるだ。
菜々子姉に誘われるまま、一緒に作ったチョコレート…
どうやって渡そうかって考えてたら、いつの間にか今日は月曜日。

何度も何度も、何度も電話をかけようと考えた。
電話して、桃先輩を呼び出して…それで…これを渡そう、って。
なのに…

「俺の意地っ張り…」

結局電話は出来ずじまい。いつもは必要以上に電話してくる桃先輩からも、
こんな時に限って…何の連絡も無かった。

「桃先輩……」

ふと、先輩の顔が頭に浮かぶ。

とにかく、今日は何がなんでも渡さなきゃ…

そうこう考えてるうちに、学校に行く時間が近付いてきた。
いつもはまだのんびり飯とか食ってる時間だけど、
今日は心の準備をするために、桃先輩が迎えに来るより先に外に出た。

「お、めずらしいな!お前が外で待ってるなんて♪」
「…別に…」

口ではそう言いながらも、俺はいつも通りの桃先輩の様子に少し安心した。

「どした越前、早く乗れよ?」

黙って立ち尽したままの俺に、桃先輩が首を傾げる。
早く、渡さなきゃ…今渡さなかったら、きっとまた渡しそびれる…

「桃、先輩っ…」
勇気を出して、一言。
「ん?」
「あのっ…これ!!」
意地っ張りな俺を、今だけでも閉じ込めて。
「へ??」
「だからっ…チョコレート…!!」

突然のことに呆然としてる様子の桃先輩の前に、
奈々子姉によって綺麗にラッピングされたソレを両手で突き出した。

なんか俺…ヘタな少女漫画のヒロインみたいなことしてる…ιι

物凄く恥ずかしくて、俺は赤く染まっていく顔を隠すために、
思いきり俯いた。

「これは…その、もしかして…バレンタイン、の…??」

驚いたような桃先輩の声に、俺は俯いたままコクコクと頷いた。



「マジかよ…すっっげぇ嬉しい…」

…え…
頭の上から聞こえてきた桃先輩の言葉…。


ホントは、すごく不安だった。
当日に電話できなかったこと。当日に、チョコを渡せなかったこと…

桃先輩から何の連絡が無いのも、怒ってるからなんじゃないかって。
すごく、不安だったんだ…―

「え、越前?!何泣いてっ…ιι」
「っく、だってっ…」

気が緩んで、涙が止まらなくなった。
桃先輩の笑顔が…喜んでくれたことが…すごく、嬉しくて。

「っんで、電話とか…してくれなかったんスかっ…」

不安なだけじゃなくて、すごく寂しかったから。
先輩の声が聞きたいのに、素直になれない自分が焦れったくて…
何度も泣きそうになった。

「悪ぃ…母さんがインフルエンザかかっちまってよ…弟たちの面倒見るので精一杯だったっつーかι
…マジ、ごめん。そんなん、言い訳だよな…」

俺…なんで桃先輩に謝らしてんの?
謝らなきゃいけないのは…俺じゃん……

「ごめん、桃先輩…ごめんなさい…」
「越前…??」

電話出来なかったのは俺なのに。
渡せなかったのは、俺なのに。

「俺、逃げてたんス…素直じゃない自分にっ…、なのに…桃先輩のせいにして…ごめ、なさい…」
「……越前、泣くなって。それに…謝ることもねぇよっ」

微笑みながら、桃先輩が言う。

「?」
「お前にチョコ貰えるなんて思って無かったからよ…俺、マジすっげぇ嬉しいんだぜ?」

顔を上げた俺の頬に手を添えて、その手で涙を拭ってくれる。

「ありがとな、越前…」
「……ん」

微笑んだまま唇を重ねてくれた桃先輩につられるように、
俺の涙もいつの間にか止まってた。

あぁ…俺はやっぱり、この人のことが好きだ。
この人の笑顔が…この人の仕草が…
この人の、すべてが愛しい…。

「ほら越前、早く行かねぇと朝練遅刻すっぞ!」
「っス…」

俺の瞼にキスをしてから、先輩は俺に自転車に乗るよう促した。
それに素直に従って、俺はいつものように自転車の後ろに飛び乗る。

「…大好きっスよ…桃先輩……」

自転車を漕ぐ桃先輩に聞こえないように…
それでもちゃんと伝わるように、先輩の背中に顔を埋めて言ってみた。

それが聞こえたのか聞こえなかったのか…
桃先輩は鼻歌交じりに自転車を漕いでいた。
たけど…その分、先輩のこと考える時間も増えた気がする。

こんなバレンタインも…悪くないかもね…
なんて、桃先輩の鼻歌を聞きながら、柄にもなく…俺は思った。



 fin*


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 □ずーっと前にもらったみいののバレンタインSS!!
  許可をもらってついに掲載しちゃいました!!
  携帯メールでいただいたので、もらった日付がかいてあったんですけれど
  なんと、2/23日。8ヶ月前の作品!
  それでも何度見ても癒されますv
  これぞ、癒し系。ほんわか気分になれますv
  素敵SSありがとうございました!8ヵ月越しのお礼(笑)











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